このブログを検索

個人事業主と自家用法人

数多くの会社設立本には、会社のメリットについて給与所得控除の存在を上げる。しかし、何故かデメリットの社会保険料の計算は無視する。とは言え、個人事業のままでいるよりは自家用法人も設立して、美味しい所を両取りする方が法人運営の手間が増える事を考えても得だと思っている。その様な社会保険料も税金も視野に入れた法人と個人事業の併用方法を紹介する。

税金を抑える最も確実な方法

個人事業であれ、自家用法人であれ、どちらも完全に事業主の意思に完全に従う点で雇われの身分とは全く異なる。稼ぎが増えれば税金も増えるのだから、税金を抑えたければ稼ぎを抑えるのが最も確実である。

稼ぎを増やす方は簡単とは言えないが、稼ぎを抑えるのは事業主の一存で出来る。嫌な仕事を切り、仕事をゆっくり・じっくりと、そして、私的な時間を増やせば良いのだ。

どれだけの収入があれば満足な生活が営めるのか。生活に費やす時間を増やせば節約出来るお金も多いハズ。…料理、育児、教育…時間が無くて他人に任せた多くの楽しみを自分の手に取り戻す事が出来る。

勿論、生活費と事業資金の余裕も必要だが、闇雲に増やしても後で相続の悩みを増やすだけである。個人事業も自家用法人も単にお金を稼いだり節約したりするだけの存在ではなく、豊かな人生を送るのに役立てる道具だと、まずは宣言したい。(以下、長々とお金の話になってしまうが…)

法人と個人事業の社会保険料比較

法人の(2017年4月分から8月分の)社会保険料は、会社負担分を給与に含めると、補正した給与額の 26.2% (協会けんぽ、我が社の場合) にもなる。 …これには上限はあるが、上限額に達する年収(補正しない給与額、以下同様)は1,626万円にもなるから、通常の給与額では比例する範囲だと言える。
(注) 社会保険料は、健康保険料:介護保険第2号被保険者→11.71%、厚生年金保険料:一般の被保険者→18.182%、子ども・子育て拠出金→0.23% の合計が 30.122% である。その内、健康保険料と厚生年金保険料は労使折半なので、会社負担分を含めた給与額は、保険料計算のもととなる額よりも (11.71%+18.182%)/2=14.946% 高くなる。この補正した給与額から社会保険料の負担率を計算すると、26.2%になる。
その給与額は一切の控除がないどころか、所得税の掛からない通勤手当まで含めて算定する。しかも、給与額のあるレンジに対して等級を定める為に算定された給与額が実際の給与額よりも高いこともある。(低い場合もある。)

但し有利な点もあって、この社会保険は、被扶養者の健康保険と被扶養者で配偶者の国民年金まで賄い、しかも保険料は被扶養者の有無に関わらない。…世帯主のみが稼ぐモデルに合わせれば有利ではあるが、配偶者の独立性を保てない問題点(世帯主にお金が集中する…離婚も出来ない)は残る。

一方、個人事業の場合は、社会保険料は国民健康保険と国民年金(人数分)の合計になる。それは固定(511,780円)部分+所得比例(基準総所得金額の11.6%)部分になる。(40歳から60歳の夫婦で、私の居住地、2017年の値として) …これにも上限はあるが、上限額に達する基準総所得金額は762万円の計算になる。
基準総所得金額とは、世帯の被保険者各自の所得額から33万円を差し引いた額(マイナスになる場合はゼロ)の合計額になる。
そして、国民健康保険の保険料は世帯毎である点が法人の場合(給与所得者毎)とは異なる。家族に所得を分散させても、世帯で上限額に達した後は保険料は増えないのだ。

つまり、社会保険料は、法人の場合は比例部分が高く、法人を設立して給与所得控除の恩恵を受けようとしても、社会保険料の高さがそれを打ち消す。家族に所得を分散させる場合は(扶養の条件を超える所得の家族皆が高い社会保険料を支払うから)尚更である。

しかし、固定部分が無いので給与額を低くすれば社会保険料は個人事業の場合よりも低く出来る。 …但し、下限の算定額以下の給与では、事実上固定額となり、272,616円となる。

従って、社会保険料と所得税の合計で考えると、給与はなるべく少なくするのが合理的と言える。

個人事業も併用すると

法人を設立し、法人代表として報酬(=給与)を貰えば、国民年金と国民健康保険からは抜けて、厚生年金と健康保険に入ることになる。個人事業を続けて事業所得があっても(給与額で決まる)社会保険料は変わらない。そして、事業所得で生活費が賄えるなら、報酬額を増やすことも無い

更に、法人に個人事業の作業を委託し、法人に作業費を支払えば、個人事業の経費(外注工賃)にして事業所得を圧縮することも出来る。…ブログ記事で計算例を紹介[税務相談には税理士資格が必要]

それで法人には収益が発生するが、配偶者を(被扶養者のまま)非常勤役員にして報酬を支払ったり、社宅に経費を使ったりすれば合法的に法人所得税を圧縮(あるいはゼロに)出来る。

健康保険の被扶養者の条件

常勤役員は、報酬額に関わらず社会保険に加入する必要がある。代表社員は勤務形態に関わらず常勤役員とされる。逆に言えば、代表社員はどんなに報酬額が低くとも(例えば、月額54,200円)社会保険に加入できる。

しかし、就業時間の3/4以下しか勤務しない場合、代表社員以外の役員は非常勤に該当する為、報酬がどんなに高くても社会保険に加入する必要が無い。しかし、報酬は被扶養者の条件には関係する。

配偶者が健康保険の被扶養者として認定される基準は、年収が130万円未満、かつ被保険者の年収の1/2未満とされている。

従って、被扶養者の給与が被保険者の給与より高くても、被保険者に給与以外の収入があってこの条件を満たしていればOK。しかも、被扶養者の条件を満たしているかどうかを認定するのは事業主(=自分)である。

非常勤役員としての報酬額を決めるその他の要素は源泉所得税と住民税である。月額が88,000円未満の場合は源泉所得税を徴収しない、年間給与が100万円以下の場合は住民税が発生しないから特別徴収しない、ので法人の事務が楽になる。

年間給与を100万円以下とするには、月額は83,300円(100円未満切り捨て)以下にする。この額なら、扶養者は配偶者控除を受ける事が出来る。

一方、法人を設立せずに個人事業をする場合は、配偶者を青色申告者の事業専従者にして1円でも給与を支払えば、配偶者控除を受ける事は出来なくなる。

会社経費を増やす為の社宅の活用

法人は経費を使えば利益を減らす事が出来るのだが、税務署は経費の使い方には目を光らせている。調査の結果、経費ではなく役員賞与であると認定されると、役員賞与は損金にはならないから法人税は追徴されるし、所得税も追徴されるというダブルパンチを食らう。

従って、法人の経費に役員の私的費用を1円も混ぜてはならない。(例: 社有車の私的利用は厳禁。) …その点、個人事業なら事業と私的費用が混ざっても標準的な家事按分で処理すれば大丈夫。

そもそも、無駄な経費を使って利益を圧縮するよりは、ちゃんと税金を納めた方が手間も掛からないし、気分は良いし、内部留保もしっかり確保出来る。

しかし、必要な私的費用を合法的に法人経費に出来る唯一の例外がある。社宅費用である。役員に対して社宅を貸与する場合は使用人に対する場合よりも条件が厳しいが、他所から借り受けた住宅(床面積が240平米以下)を貸与する場合には、「会社が家主に支払う家賃の50%以上の額を役員から徴収する場合は給与として課税されない。」ことになっている。…この場合、家主と法人の間で物件の賃貸契約を結んでいる必要がある。

そして、家主に支払う家賃と徴収する社宅費の差額は福利厚生費として会社の経費に出来る。

更に、その社宅住所に法人登記をしていれば、公的使用に充てられる部分がある住宅として、家賃の35%(50%の70%)を社宅費として徴収すれば良い。…それに、この額が役員報酬を上回ったとしても、全く構わない。
所得税法 基本通達 36-43 (通常の賃貸料の額の計算の特例)
36-40又は36-41により通常の賃貸料の額を計算する場合において、その住宅等が次に掲げるものに該当するときは、その使用の状況を考慮して通常の賃貸料の額を定めるものとする。この場合において、使用者が当該住宅等につきそれぞれの次に掲げる金額をその賃貸料の額として徴収しているときは、その徴収している金額を当該住宅等に係る通常の賃貸料の額として差し支えない。
(1) 公的使用に充てられる部分がある住宅等 36-40又は36-41により計算した通常の賃貸料の額の70%以上に相当する金額
住居費は高額であり、かつ定期的であり、領収書も不要で手間いらずなので、法人経費を増やすのにはうってつけである。

個人事業と法人の税法の違い

もし、個人が手にする事が出来るお金として比較するなら、個人事業だろうと、法人を設立してそこから報酬を貰おうと、(個人事業税を除けば)どちらも同じ税法の下にある。法人が支払う役員報酬は損金とする事が出来るから、法人にとって役員報酬を支払う事については税は掛からない
つまり、個人が手にする事が出来るお金(=生活に使ってしまうお金)に関しては、個人事業の場合と法人から給与を貰う場合とで適用される各種の控除に多少の差があっても、同じ所得に対しては同じ税が課せられる。寧ろ、実質的な税である社会保険の違いの方が大きい。

そこで、自家用法人からも給与所得がゼロとなる役員報酬を得れば、個人事業を行っていても事業所得には関係しない固定額の社会保険料に変えられるという発想になった。
一方、事業資金の内部留保として比較するなら、法人の所得には個人事業とは別の税法が適用される。
  • 個人事業による所得 …所得税、個人事業税、住民税
  • 法人の所得 …法人税+地方法人税、法人事業税+地方法人特別税、法人県民税、法人市民税
この事業資金の内部留保にのみ、個人事業と法人の税率を比較する意味がある。

個人に掛かる税率が法人に掛かる税率を超える領域
個人事業税と住民税は所得額によらず税率が一定だが、所得額に応じて所得税は5%から45%迄変化する累進課税である。法人税の方も所得額によって税率が変化するが、その変化の度合いは所得税よりは小さい。

そして、事業所得の税率が法人の税率を超える部分については、自家用法人に外注工賃としてお金を渡すと、そのお金は個人事業の費用になるから事業所得から法人所得へと移動させる事が出来る。但し、法人税が20万円を超えると中間納税が必要になる点にも留意。

法人の内部留保を個人に移動させる費用
しかし、この法人の内部留保を個人が再び手にしようとした時、配当で個人に移動させるなら、所得税と住民税、給与なら加えて(75歳未満の場合は)社会保険料が課せられるのである。一方、個人で内部留保した場合では、それを事業以外で使おうと何の税金も掛からない。

例外として、法人を解散した場合や後継者に任せた場合には、内部留保(の一部)を退職金として個人に移動させる事が出来て、それには社会保険料は掛からないし、退職所得控除がある為に税金が減る(或いは掛からない)。しかも、配偶者を非常勤役員としていた場合なら、配偶者にも退職金を支給出来る。(…但し、過大な額だと税務署が退職金として認定しない場合がある。)

しかし、上記以外にも法人の内部留保を個人が私的に利用する手段はある。それは、役員貸付金として会社から借金する方法である。一時的にお金が必要になった時は銀行ローンに頼らずとも、自家用法人の内部留保を銀行代わりに利用すれば良い。但し、法人に対して利息を支払う必要があり、特例基準割合(銀行短期貸出金利の平均値+1%)と呼ばれる年利で計算する。

個人事業と法人の会計の違い

法人会計に一度慣れた目で個人事業の会計との対比をしてみると、幾つかの相違点が見えて来る。そこに注意して、なるべく法人会計に沿う形で個人事業の会計を処理すれば個人事業と自家用法人という2つの形態を活用するのも負担にならない。

会計と税務の範囲
個人事業の会計は、財務諸表を作って事業所得を算出することにあり、法人会計は財務諸表を作って当期純利益を算出することにある。
  • 個人事業の場合 
    • 事業所得は、個人事業主の所得の一部なので、他の所得と合計して個人所得と所得税を算出し、税務署に所得税確定申告を行い、納税する。 
    • この申告から、住民税と個人事業税が決定されて、住民税は市役所に納税し、個人事業税は県税事務所に納税する。 
  • 法人の場合
    • 法人会計は、法人税等を差し引いた後の当期純利益から法人税、法人事業税を算出し、そこで算出した法人税額から地方法人税、法人県民税・地方法人特別税、法人市民税を算出する。
    • そして、税務署には法人税・地方法人税の確定申告、県税事務所には法人県民税・法人事業税・地方法人特別税の確定申告、市役所には法人市民税の確定申告をそれぞれ行い、納税する。
その他に、(消費税課税業者の)個人事業・法人ともに、上記税務とは別に、消費税を算出し、税務署に消費税・地方消費税の確定申告を行い、納税する。

尚、納税した(税込み経理の)消費税、納税した(個人・法人)事業税は事業の経費に出来る。

法人会計は、当期純利益を計算する為に法人税等を差し引く必要がある。一方、法人税等の計算は当期純利益を元に計算する。一見循環しているように思えるが、期中に支払った法人税等を差し引いて当期純利益を算出するのであれば何も難しくは無い。
コラム: 当期利益に基づいて計算した法人税等を差し引く(難しい)方法もある。税理士的にはこっちの方が正しい事になっていて、素人には無理です、という宣伝をしているが、税務としてはどちらも正しい。
上記の内容を纏めると、前年度の収益に基づき確定し期中に納付した法人税等を差し引いて当期純利益を算出する方法を使えば、個人事業も法人も会計の範囲では税額を計算しない。その後の確定申告の課程で税額を計算することになる。

事業資金と(事業主の)私的資金の境界
自家用法人と個人事業は、事業主にとっては自分の為の存在いう意味でほぼ同様だが、
  • 個人事業の場合
    • 事業資金も私的な預金も同じ人が所有権を持っている。その間に境界が必要なのは、事業資金は課税前のお金だからである。(流用したら横領ではなく脱税になる。)
    • 個人事業主が事業資金から(毎月の)生活費を引き出す場合は、事業主に対する貸付金(事業主貸)として扱う。…事業主に対する給与という概念は無い。
    • 事業主に対する貸付金は無利息。(同一人物間なので利息の意味なし)
    • 個人事業主が(期中に)事業資金を補填する場合は、事業主からの借入金(事業主借)として扱う。…これも勿論無利息。
  • 法人の場合
    • 法人と出資者はそれぞれが別の所有権を持つ人格なので、その間にはハッキリとした境界がある。
    • 会社役員に毎月の役員報酬を支払うと経費になる。
    • 会社役員に法人が貸し付ける場合(役員貸付金)は認定利息以上の利息を取る。もし取らないと役員に対する給与として課税される。
    • 会社役員が法人運転資金を補填する場合(役員借入金)に認定利息以上の利息をとると、その部分は役員に対する給与として課税される。…役員が受け取った利息は雑所得となる。
コラム: 役員借入金の利息は無くても通常は問題ない。それにより法人の支払利息に相当する費用が不要となって法人所得が増えるのなら税務署としては喜ばしいから。但し、パチンコ平和事件という例外はある。…資産管理会社のオーナーが自分が所有するパチンコ平和の株を資産管理会社に買わせる資金として3、455億円を無利息で貸し付け、税務署がオーナーが貰うべき利息に課税した事件でオーナー側の1・2審敗訴、上告棄却。
個人事業に於ける事業資金と私的資金の境界は事業所得を算出する為だけに必要だったので、年度末に事業所得が算出した後はその境界を取り払い、事業主貸と事業主借は無かった事(ゼロ)にして、元入金で辻褄を合わせる。その後は、新年度からの事業の為にまた境界を作る。

預金利子の取扱い
個人の預金口座の利子は源泉徴収で課税は終わっている。一方、法人の預金口座の利子は、源泉徴収はされても、課税前の利子と源泉徴収された所得税という形に一度戻してから処理する必要があり、面倒である。
  • 個人事業の場合
    • 事業用の預金口座に対する利子は事業主が事業資金を補填した形になるので、事業主借として処理する。
  • 法人の場合
    • 法人の預金口座に対する利子は源泉徴収後の金額が入金される。課税前の金額を計算して収益として計上し、所得税額は法人税額から控除することが出来る。法人税額が所得税額に満たない場合はその差額の還付を受ける事が出来る。
    • 所得税額の控除を受けない会計処理は出来るが、源泉徴収後の金額を収益とする事は出来ない。(法人事業税の計算の都合)
    • 預金口座に利息が付かないように決済用預金口座にすると面倒な処理が不要になる。

家事按分の話
個人事業にあって法人にはないのが家事按分である。

法人では個人との区別をハッキリさせる必要があり、法人の物事の私的利用に対しては利用料を徴収しなければ役員賞与と見なされる恐れがある。逆に個人の物事を法人が利用する事は構わない。

それについて個人が法人から利用料を徴収する事は可能なはずだが、利用料は役員賞与と認定される恐れもあり、得策ではない。そうすると、自家用法人と個人の関係では、個人が法人にタダで使わせるのが一番楽だ。記帳も省けるし。

個人事業では事業用も私的利用も同じ個人に属するからその間に利用料の問題は発生しない。単に事業で使う割合だけ事業の経費に計上出来るという事である。

預金口座は事業用と家計用を区別した方が良いというけれど、家事按分の対象とする項目に関しては(例えばインターネット代)事業用の口座から引落すのもアリ、だと思う。

決算後の処理
個人事業では、決算で 収益ー費用=事業所得を算出する。

算出後に、その事業所得(全額)を元入金に振り替える。更に、事業主借(全額)を元入金に振り替える。次いで、事業主貸(全額)と元入金を振り替え(…元入金は減少)る。これで、事業所得、事業主借、事業主貸の残高は無くなり、次年度に繰り越す元入金だけが残る。

事業主借は借入金、事業主貸は貸付金と考えたくなるが、そうすると、借入金の債務免除益、貸付金の貸し倒れ損、という損益項目を経て資本の増減に繋がるので課税関係が生じる。

そこで、個人事業に於ける事業主(個人)を法人会計の出資者と対比させると、事業主借と事業主貸は資本金の有償増資と有償減資に当たると言える。
  • 元入金と繰越利益剰余金は同じ性格を持つ。
    • 事業所得(全額)を元入金に振り替えるのは、法人会計で当期純利益(全額)を繰越利益剰余金に振り替えるのと同じである。
  • 事業主借と有償増資は同じ性格を持つ。
    • 事業主借(全額)を元入金に振り替えるのは、法人会計で資本金(一部)を繰越利益剰余金に振り替える(無償減資)のと同じである。
  • 事業主貸と有償減資は同じ性格を持つ。
    • 事業主貸(全額)と元入金を振り替えるのは、 法人会計で資本金(一部)と繰越利益剰余金を振り替える(無償増資)のと同じである。
但し、法人会計では、有償減資はみなし配当として出資者に対して源泉徴収の義務が生じる点と増資と減資は登記事項であり簡単ではない点が異なる。(減資の場合は、登記の前に1ヶ月以上資本金の額の減少公告をする必要もある。)

青色申告特別控除

青色申告にすると、上記の事業所得から更に10万円又は65万円差し引いた額を事業所得として所得の計算に使うことが出来る。これを青色申告特別控除という。
  • 10万円控除…簡易帳簿を使った会計
  • 65万円控除…複式簿記による会計: 仕訳帳、総勘定元帳 より 損益計算書、貸借対照表 を作成する

法人用会計ソフトを個人事業に利用する

個人事業には資本金という考え方は無いが、その増減が事業主借と事業主貸に対応していること等を考えると、法人用会計ソフトを個人事業に使うことも出来そうだ。但し、その際には勘定科目名だけは変更する。対応するのは下記。
  • 資本金 → 事業主金 : 借方=事業主貸、貸方=事業主借
  • 繰越利益剰余金 → 元入金
  • 当期純利益 → 青色申告特別控除前の事業所得
  • 法人税等 → (対応科目無し)
資本金には事業主借と事業主貸の2つの勘定科目が対応するので、資本金という勘定科目名を事業主金という名前に変えてみる。個人事業の会計では、事業主借は貸方にしか出てこないし、事業主貸は借方にしか出てこないので、事業主金という同じ勘定科目名で間違えることはない。

所得税は事業所得を求めた後で他の所得と合算して求めるので、個人事業の会計の範囲では法人税等に相当するものは算出しない。

法人会計で法人税等に含まれる法人事業税と個人事業税は対応しているので、法人税等に個人事業税を対応させたい所だが、個人事業の会計では個人事業税は租税公課に入れることになっている。