昨日は天気が良かったので、またリアシートのバックレストに入れた硬綿を薄くしたり色々調整してみた。今回もこれで最高の座り心地になったはず、と満足して作業を終了。
シートの改造をする時には何時も作業中に仮留めして座り心地を確認しながらやっている。その時はこれで良し、と思って作業を終えるのだが、後で少し長い時間座ると改良点が見つかる事が多いのだ。私がそうやって長時間マンションの駐車場でシートに座っていると不審者に見えるから、妻は止めて欲しいそうだが。
ガレージが無いから、作業は暑くなく、寒くなく、蚊に襲われない季節に限る。そうすると、春と晩秋だけが改造出来る時期になる。その時に何かの用事があったり、体の具合が悪かったりすれば作業は出来ないので、新車で買ってもう6年半になるが未だに改造が終わらない。その間にアルトは2回もモデルチェンジした。
新型車は車体が100kg以上軽いので運動性能が良く、燃費と静粛性が良くて低速トルクが大きくて運転しやすい新エンジンが載っている。これでは旧型の車体を改造しまくって一体何になるという気もしてくる。
我が愛車の取り柄を考える
しかし、新型車が出る度に買い換えていてはお金も掛かるしエコでない。自分が選んだモノなのだから、その良い所を見付けて末永く付き合う態度こそ、人生という旅の秘訣では無かろうか。自分の境遇は良さそうに見える他人の境遇と簡単に取り換える訳には行かないし、それを羨むだけの人生も虚しい。
そう考える時、まず自動車の中でアルトという車を選んだけど、最高の選択だった。家族4人が乗れて、最も小回りが利いて、タワーパーキングに停められる車高で、今では希少価値と言えるMT(もはや日本ではMTを選べない車種が殆ど)の乗用車。それに車幅が小さい軽自動車は狭い駐車場で隣に駐車する赤の他人にも優しい車。
そして我が愛車のアルトと最新のアルトと比較して見ると、最小回転半径は10cm小さいし、ラゲッジスペースは大きい。オマケにリアシートのバックレストは左右分割式(改造後)だし、フロントシートはヘッドレストの高さを調整出来るから座面を持ち上げる改造をするには都合が良い。最新のアルトではそうはいかないのだ。
改造の価値を残したい
勿論、動力性能とか静粛性とかは最新のアルトには負けるけど、それを追求するならそれこそ軽自動車ではなくもっと上級の車を選ぶことになるだろう。だから、今の愛車で良いのだ。改造するのも馬力アップとかサスペンションをガチガチにするとかの方向ではなく、自分が使い易いようにする。
自分の体に合わせてシート、シフトレバー、パーキングブレーキと位置をトコトン合わせ、愛車を自分の手足のように操縦する境地に達する喜びに較べると、静粛性や乗り心地の良さや装備の豪華さなどどうでも良くなる。
しかし、これだけ膨大な手間暇を掛けて改造していても、愛車が一瞬で廃車になってしまう可能性も在るのだ。車体はまた買えたとしても、あの改造の手間暇は戻らないという恐怖。だが、改造せずには居られない。自分が思いついた考えを試して見たい。自分の車だ、車検に通る限りどんなに改造しても構わない。その思いには改造できない賃貸住宅に住んでいるという事情もあるかもしれない。
だからこそ、苦労して改造したその価値を愛車の車体にだけでなく記録として残したい。車体が無くなっても、その記録を参考にして別の人の改造に役立ったり、或いは自動車メーカーのエンジニアの目に留まってより良い車の設計に繋がったりすれば嬉しい。
とは言え、ここで書くべきは自分独自の改造で、他の人にも役立ちそうな普遍性のあるものだと思う。ネットを検索し他の人がやっている改造を調べて参考にして色々改造もしたけど。
シートの改造方法
自分でもこれは凄いと思った他の誰もやってない改造は幾つもある。その中で最も苦労し、最も誇らしいのはシートの改造だけど、見た目には大した変化がない。それに、全く同じ車種で私と同じ体格の持ち主で無ければ、私のやった通りに改造する意味も無い。
ただ、シート表皮に内部のウレタンスポンジというシートの基本的構造はどのメーカーのどのシートでも(近年のメルセデス・ベンツでさえも)同じらしいから、私が色んな事を散々試してようやく掴んだ(素人がお金を掛けずに特別な道具も持たずにする)シート改造のコツには普遍的な価値があると思っている。
最初にシートの改造に手を付けた時は、単に座面を持ち上げて視界を良くしようとしか考えてなかった。座り心地の良し悪しは全く考えてなかった。リアシートの改造もヘッドレストを付ける事とバックレストを倒してラゲッジスペースにする時に平らにしたかったからで、座り心地の事は考えてなかった。
しかし、今はシートの座り心地が乗用車の価値に占める割合は極めて大きいと感じている。そもそも、止まっている状態では、馬力だの静粛性だの操縦性だのブレーキ性能だのは一切関係なく、そのシートの座り心地のみで車の良し悪しは決まる。
そして運転中にもシートの座り心地は重要だ。もし、お尻が痛くなっても立ち上がる訳にはいかないし運転に集中も出来なくて安全にも関わる。
そのシート改造の方法は、まず適切な運転姿勢が取れるようにシートの位置と大きさを自分の体に合わせるようにする。小柄な人には座面が低すぎるのと座面長が長すぎるのが同時に起きるけど、座面長を短くすることで余ったシート表皮が座面の嵩上げで不足するシート表皮と相殺されてうまい具合に納まる。
そして、お尻が痛くならないように座面の形状をお尻に合わせたり、座面硬さに変化を付ける。骨の出張っている所は下げて柔らかく、その周辺や腿裏は持ち上げて硬く。シート表皮も弛ませておくと骨の出張っている部分に力が掛からない。
スポンジを加工した面は滑らかには出来ないから、表面をそのままにして裏側もしくは真ん中に切れ目を入れて内側からするか、表面からする場合にはその上に別の滑らかな面を持つスポンジや固綿を載せる事になる。
但し、車両の保安基準に内装材料の難燃性の技術基準というものがあって、表面からの深さ12mm迄の材料を対象としている事から、別の材料を使うとなると難燃性を証明出来なければ車検に通らない恐れはある。
しかし、燃えやすい材料を使った場合には保安基準に違反するかも知れないけど、それは騒音や排気ガスの規制値に違反するような他人への迷惑行為ではない。そして、この保安基準には高級車の内装材料に欠かせない厚さ3mm以上の板(合板を含む)や天然の皮革はどんなに燃えやすくてもOKという抜け道さえ用意されている。また、難燃性の基準が出来る以前に製造された車は、そのままは勿論、燃えやすい材料を使って改造した場合でもOKなのだ。
だから、個人が自己責任で改変する場合にまで、そんな保安基準を適用する方が間違っていると思うのだ。例え保安基準に違反していたとしてもそれは悪い事をしている訳ではないのだから、胸を張って自己責任で改造して欲しい。
因みに、我が愛車はフロントシートの座面とバックレストは(表皮とスポンジが貼り付けられていたから丁寧に剥がした上で)表面から、リアシートの座面は真ん中に切れ目を入れ、リアシートのバックレストは裏側から、それぞれ加工した。フロントシートの表皮のすぐ下には別の材料を入れたけど車検は問題なく通った。シート表皮がオリジナルのままなら問題とされる事は無いと思う。
そう言えば、シートを改造した結果、最適なフロントシート位置が5cm位は前進した。バックレスト下部を削った事だけではなく、座面を持ち上げた事でもバックレストの傾斜角の関係で腰の位置が後方にズレる。フロントシートの位置が前進したお陰で後部座席の空間も広がる事になった。あっ、それにリアシートの改造でも腰の位置が後方にずれてた…。
安全装備の置き場所を作る
保安基準では設置の義務は無いけど、携行するのが望ましい安全装備は幾つかある。停止表示板、緊急脱出用のガラス割りハンマーとベルトカッター、LEDライト。それに視界の確保の必要なハンドワイパーと窓拭きタオル。
これらは常備し、かつ何時でも出せる所に置きたい。だけど、自動車には専用の置き場所がなくて運転席の近くに置こうとするととても邪魔になる。そこで、フロントパネルの下部を切り取って空いていたスペースにこれらの安全装備の置き場所を作ることにした。
写真は助手席側からフロントパネル下部を覗いた所。左側中央は窓拭きタオル置き場、その下にはLEDライト、更にその下にはハンドワイパーの柄が見える。上部にはETC、その下側奥には移設したアクセサリーソケット、更にその下側奥には停止表示板がある。
この写真は助手席からの眺め。安全装備の置き場所は直接目に触れないようにしてみた。
LEDライトのお尻にはガラス割りハンマーから移植したチップを埋め込んだ。ドリルで丸い溝を掘り、接着剤で固めてある。ガラスを叩いた衝撃で外れるかも知れないけど試していない。
ライトのスイッチは電子式の為に極僅かづつ放電するから、お尻の電池ケースの蓋を少しひねってスイッチを押しても点灯しない状態で常備している。ライトの電池はCR123Aというリチウム電池を2本使う。灼熱の砂漠で10年放置しても使えるし、低温にも強い、非常用にはうってつけの電池だ。特殊な電池と思われるかも知れないけど、コンビニでも(今のところは)売られている。
LEDライトはマグライトのホルダーを使って固定している。そのホルダーをホームセンターで売っている金具を色々加工してパネルに取り付けた。金具にはどうしても溶接したい部分があったのでネットで見付けて街の鉄工所で千円で溶接してもらった。
ベルトカッターはカイトサーフィンの用具として売られているものをネットで見つけて購入。とても良く切れる。シートベルトを切るだけの為には勿体無い。お菓子の袋を開けるのにも便利。
現在はパーキングブレーキのカバーに物入れを作って、その中に入れている。
停止表示板とハンドワイパーは運転者の脛の上辺りに位置するから、運転中に絶対に落下しないように配慮している。まず、停止表示板は左側に引き出さないと外れないのだが、そこにはアクセサリーソケットのお尻が当たっていている。ハンドワイパーを外した上で奥に押し込んでから左側に引き出さないと取り出せないのだ。そして更に念を入れて別のベルトでも固定している。
固定ベルトは安全の為に加えたはずだが、下部を切り取った為に多少グラグラしていたフロントパネルがそれで安定して一挙両得だった。停止表示板を内装の構造材としても活用したのは世界でも唯一では無かろうか。
ハンドワイパーの置き場所は偶然発見した。アルトのファンの部品の間に丁度ワイパーがハマって固定される場所があったのだ。そして、ハンドワイパーにはロック装置を付けた。ハンドワイパーは横にスライドさせないと絶対に外れないのだが、その柄の穴に棒を差し込んでスライドさせない構造である。その棒を支える筒にはボールペンの軸を使ってみた。
更に、そのロック装置の棒が抜けないように、そのロックまで考えた。スパーリングワインのコルク栓で作った棒のつまみを回すと溝にハマって抜けなくなるのだ。
このシンプルな方法を思いついた時も本当に嬉しかった。