自家用法人(合同会社)の会計に必要な会計帳簿を研究する。会計帳簿は会社経営には欠かせない情報とは言え、自家用法人であれば、必要な数字など全て代表者の頭の中に入っている。
従って、法令と税務署の要求のみで判断する。
従って、法令と税務署の要求のみで判断する。
法令の要請
会社法では、
第617条 持分会社は、法務省令で定めるところにより、その成立の日における貸借対照表を作成しなければならない。
第2項 持分会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表その他持分会社の財産の状況を示すために必要かつ適切なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)を作成しなければならない。となっていて、詳しくは法務省令による、とある。この法務省令というのが「会社計算規則」になる。
第71条 法第617条第2項 に規定する法務省令で定めるものは、次の各号に掲げる持分会社の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。これを纏めると、合同会社では、(1年以下に定めた) 事業年度毎に、貸借対照表、損益計算書、社員資本等変動計算書、個別注記表を会計帳簿に基づき作成することが求められている。しかし、その会計帳簿についての規定はない。
第1号 (略)
第2号 合同会社 この編の規定に従い作成される損益計算書、社員資本等変動計算書及び個別注記表
第2項 各事業年度に係る計算書類の作成に係る期間は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)から当該事業年度の末日までの期間とする。この場合において、当該期間は、1年(事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、1年6箇月)を超えることができない。
第3項 法第617条第2項 の規定により作成すべき各事業年度に係る計算書類は、当該事業年度に係る会計帳簿に基づき作成しなければならない。
一方、法人税法によれば、青色申告法人の帳簿についてのより詳しい規定(青色申告法人でなければ、それに従う必要は無いけど)がある。法人税法では、
第126条 第121条第1項(青色申告)の承認を受けている内国法人は、財務省令で定めるところにより、帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存しなければならない。とあって、その財務省令とは、法人税法施行規則になる。
第53条 法第121条第1項(青色申告)の承認を受けている法人(以下この章において「青色申告法人」という。)は、その資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引につき、複式簿記の原則に従い、整然と、かつ、明りように記録し、その記録に基づいて決算を行なわなければならない。
第54条 青色申告法人は、全ての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿(次条において「仕訳帳」という。)、全ての取引を勘定科目の種類別に分類して整理計算する帳簿(次条において「総勘定元帳」という。)その他必要な帳簿を備え、別表20に定めるところにより、取引に関する事項を記載しなければならない。
第55条 青色申告法人は、仕訳帳には、取引の発生順に、取引の年月日、内容、勘定科目及び金額を記載しなければならない。ここで、法令が要請する会計帳簿の より詳細な条件が分かった。結局、最低限 仕訳帳と総勘定元帳だけは必要になるが、その中身は取引の発生順か勘定毎かの違いに過ぎないのだ。
第2項 青色申告法人は、総勘定元帳には、その勘定ごとに記載の年月日、相手方勘定科目及び金額を記載しなければならない。
損益計算書
会社計算規則は、儲けに関する書類を損益計算書と呼んでいる。まず、売上から売上原価を差し引いたのが粗利益である。正確には売上総利益(第89条)という種類の利益である。そこから人件費や不動産の費用などの様々な費用(販売費及び一般管理費)を差し引いたのが営業利益(第90条)になる。
営業利益から 借り入れ資金の支払い利子(営業外費用)を差し引き、余裕資金の運用益(営業外収益)などを加えたのが経常利益(第91条)になる。
経常利益から 事故などによる予想外の出費(特別損失)を差し引き、予想外の収入(特別利益)を加えたのが税引前当期純利益(第92条)になる。
そこから更に税金(第93条)を引いたのが当期純利益(第94条)になる。
第93条を除き、各条の第2項では、値がゼロ未満の場合はマイナス符号をはずし、「利益」を「損失」と変えて表示するよう求めている。そして、下記の項目を区分して損益計算書に表示する(第88条)よう求めている。
- 売上高
- 売上原価
- 売上総利益 = 売上高 ー 売上原価
- 販売費及び一般管理費
- 営業利益 = 売上総利益 ー 販売費及び一般管理費
- 営業外収益
- 営業外費用
- 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 ー 営業外費用
- 特別利益
- 特別損失
- 税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 ー 特別損失
- 法人税等
- 当期純利益 = 税引前当期純利益 ー 法人税等
貸借対照表
会社計算規則は、資産、負債、純資産(簿記の用語では資本と呼んでいるもの)に関する書類を貸借対照表と呼んでいる。そして、下記の項目を区分して貸借対照表に表示する(第73条)よう求めている。
- 資産 (第74条)
- 流動資産
- 固定資産
- 有形固定資産
- 無形固定資産
- 投資その他の資産
- 繰延資産
- 負債 (第75条)
- 流動負債
- 固定負債
- 純資産 (第76条)
- 社員資本
- 資本金
- 出資金申込証拠金
- 資本剰余金
- 利益剰余金
- 評価・換算差額等
一般的には、借方と貸方に分けて左右に表示する(法令では求められて無い)場合が多い。
社員資本等変動計算書
会社計算規則は、社員資本等の変動に関する書類を貸借対照表と呼んでいる。
資本の取引は損益には影響が無いので損益計算書には表れないし、貸借対照表には当期末の残高しか表れないので、その2つの書類だけでは期中の資本の変動は(前期の決算書類と比較しなければ)分からない。その為にこの書類が必要になった。
法令は、下記の項目を区分してに社員資本等変動計算書に表示する(第96条)よう求めている。
資本の取引は損益には影響が無いので損益計算書には表れないし、貸借対照表には当期末の残高しか表れないので、その2つの書類だけでは期中の資本の変動は(前期の決算書類と比較しなければ)分からない。その為にこの書類が必要になった。
法令は、下記の項目を区分してに社員資本等変動計算書に表示する(第96条)よう求めている。
- 社員資本
- 資本金
- 資本剰余金
- 利益剰余金
- 評価・換算差額等
個別注記表
会社計算規則は、第1号から第19号まで項目を区分して個別注記表に表示する(第98条第1項)よう求めているが、合同会社については、第1号、第5号、第7号から第18号に定める項目を表示することを要しない(第2項第5号)。
従って、必ず表示しなければならないのは、下記の項目である。
第2号 重要な会計方針に係る事項に関する注記この内、「会計方針の変更」、「表示方法の変更」、「誤謬の訂正」、が無い場合は 第3、4、6号 は表示する必要が無い。つまり通常は、
第3号 会計方針の変更に関する注記
第4号 表示方法の変更に関する注記
第6号 誤謬の訂正に関する注記
第19号 その他の注記
- 重要な会計方針に係る事項に関する注記
- その他の注記
この2つで足りる。
重要な会計方針に係る事項に関する注記は、会計方針に関する次に掲げる事項(重要性の乏しいものを除く。)とする(第101条)。
第1号 資産の評価基準及び評価方法とあるから、重要性があると判断する項目のみ記述すれば良い。
第2号 固定資産の減価償却の方法
第3号 引当金の計上基準
第4号 収益及び費用の計上基準
第5号 その他計算書類の作成のための基本となる重要な事項
その他の注記は、第100条から前条までに掲げるもののほか、貸借対照表等、損益計算書等及び株主資本等変動計算書等により会社の財産又は損益の状態を正確に判断するために必要な事項とする(第116条)。
これも、必要と判断する事項のみ記述すれば良い。