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社会保険料と税額の計算知識

自分に必要な範囲で社会保険料と税額の計算に必要な知識・情報を纏めている。
  • 具体的な数字は私が住んでいる某県某市のものを使う。
  • 法人の資本金額は1千万円以下の場合の情報に限定する。
  • 特別な所得控除や税額控除については述べない。
  • 居住、或いは事業所のある自治体の都道府県や市区町村に応じて、この記事の「県」と「市」の文字を以下のように読み替える。
    • 県 → 都・道・府
    • 市 → 特別区・町・村
自家用法人を設立していても、年齢条件などで厚生年金や健康保険の被保険者になれない場合がある為に、国民年金と国民健康保険についても纏める。

独特の説明

関数を導入して、税金額の計算を(理系には)分かり易く表現する。そして、税額の計算結果がマイナスの場合は値がゼロになる、という原則をここで宣言し、それに関する表現を簡略にする。事前に以下の事柄を独自に定義しておく。
税金の還付は納め過ぎた税金を返還するだけの事であり、所得がマイナスの場合にお金を給付してくれる事は…現在の税制では…無い。
f○○税額(課税額) = 課税額×税率 - 控除税額
税率と控除税額は課税額のゾーンで変化…f(x) = ax - b と書いたら、一次関数だと分かる。 傾きの異なる一次関数を不連続が生じないように繋ぐ為には控除税額が必要になる。
f境界(x) = 1 … x > 0、 0 … x ≦ 0
徴税コストよりも少ない税額であれば、免除する方が合理的と言える。そのような境界に於ける不連続を作る事が出来る。
頭数 = 扶養親族数 + 控除対象配偶者数(0|1) + 1
扶養親族には配偶者を何故か含めない。故に、扶養控除と配偶者控除が別れて存在するが、控除額は同じである。結局、扶養親族に配偶者を含めた方が遥かに分かり易いはず。将来、控除額を変える気なら意味があるとは思うが…。式の最後の + 1 は本人を数に含める意味。

業界用語集

似た言葉が沢山ある。1円違いでも大きく結果が異なる場合があるので、厳密な定義の理解が必要。 
  • y が x 以上 … y ≧ x
  • y が x を超える … y > x
  • y が x 以下 … y ≦ x
  • y が x 未満 … y < x
  • 総合課税 … 各種所得を合算し、その所得に対して累進課税する。
    • 事業所得、(総合課税の)譲渡所得、不動産所得、山林所得の赤字は通算出来る。
  • 申告分離課税 … 他の所得とは合算せずに、その所得に対して課税する。税率等は総合課税とは異なる。
  • 源泉分離課税 … 源泉徴収だけで課税が完結し、所得額に影響しない。
  • 確定申告不要制度 … 確定申告しない選択が出来る。確定申告しない場合は源泉分離課税と同じ扱いになる。
  • 合計所得金額 … Σ各種所得金額(総合課税) + Σ各種所得金額(申告分離課税)
  • 総所得金額 … Σ各種所得金額(総合課税) - Σ各種損失の繰越控除額
  • 総所得金額等 … 合計所得金額 - Σ各種損失の繰越控除額
  • 課税総所得金額 … 総所得金額 - Σ各種所得控除額
課税総所得金額は。総合課税の所得税と住民税の計算に使われる。その所得控除の種類は所得税と住民税で同じだが、控除額は所得税の方が大きい。 その他の所得金額(等)は免税や軽減の基準となる金額として使われたりする。

  • 申告納税 … 納税義務者が自ら税額を計算して納税する。
    • 所得税(+復興特別所得税)、法人税、法人県民税、法人市民税、消費税など。
  • 賦課課税 … 税の徴収者が税額を計算して納付書を送付する。
    • 住民税、個人事業税など。

所得税

個人が確定申告をして所得税を納付する。給与や年金の場合は源泉徴収される。確定申告が不要になる場合は、
  • 年末調整を受けて他の所得が20万円以下(同族会社の役員や親族がその同族会社から賃料や利子を受け取った場合を除く)
  • 公的年金の収入が400万円以下で他の所得が20万円以下
  • 所得の合計が基礎控除額を下回る
所得税額(総合課税)=f所得税(課税総所得金額) - Σ各種税額控除
  • 税率: 5% 控除税額 0円 @所得 195万円以下
  • 税率: 10% 控除税額 97,500円 @所得 330万円以下
  • 税率: 20% 控除税額 427,500円 @所得 695万円以下
  • 税率: 23% 控除税額 636,000円 @所得 900万円以下
  • 税率: 33% 控除税額 1,536,000円 @所得 1,800万円以下
  • 税率: 40% 控除税額 2,796,000円 @所得 4,000万円以下
  • 税率: 45% 控除税額 4,796,000円 @所得 4,000万円を超える

復興特別所得税 (2037年の所得迄)

所得税額の2.1%

住民税 

住民税は市民税と県民税に分かれているが、両者とも1月1日に居住している市が徴収する。(前年度の所得に対して)…特別徴収の場合は住民税を給与から控除して、その自治体に特別徴収義務者が納める。

住民税 = 住民税均等割額 × f境界(均等割免除) + 住民税所得割額 × f境界(所得割免除)
  • 住民税均等割額 = 5,800円
    • 市3,500円、県2,300円
  • 住民税所得割額 = f住民税(課税総所得金額) - Σ各種税額控除額
    • 税率: 市6%、県4% 合計10% (単一税率なので控除税額無し。)
  • 所得税と住民税の人的控除の差
    • 基礎控除 38万円 - 33万円 = 5万円
    • 配偶者控除(一般) 38万円 - 33万円 = 5万円
    • 扶養控除(一般) 38万円 - 33万円 = 5万円
    • 扶養控除(特定) 63万円 - 45万円 = 18万円
扶養控除(一般)は、課税対象年の12月31日の年齢が16歳以上の控除対象扶養親族の事。…児童手当の支給に伴う処置だが、所得制限で児童手当が貰えない場合も16歳未満の扶養親族についての控除はされない。 
扶養控除(特定)は、課税対象年の12月31日の年齢が19歳以上23歳未満の控除対象扶養親族の事。…学費負担を考慮した処置だが、学費の有無は問わない。
  • 調整控除 税額控除で人的控除額の差の合計の5%から所得に応じて減じる

所得の種類

全部で10種類ある。利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、及びそれらの所得の何れにも属さない所得 = 雑所得。


給与所得
(給与額 660万円以下の場合の正確な給与所得額は 所得税法 別表第5による)
  • 給与所得控除額…但し、給与額を限度
    • 給与額 65.1万円未満→ 65.1万円
    • 給与額 161.9万円以下→ 65万円
    • 給与額 162.5万円以下→ 65万円 (最大2,000円の誤差)
    • 給与額 162.8万円以下→ 給与額×40% (最大2,800円の誤差)
    • 給与額 180万円以下→ 給与額×40% (最大2,400円の誤差)
    • 給与額 360万円以下→ 給与額×30%+18万円 (最大2,800円の誤差)
    • 給与額 660万円未満→ 給与額×20%+54万円 (最大3,200円の誤差)
    • 給与額 1,000万円以下→ 給与額×10%+120万円
    • 給与額 1,200万円以下→ 給与額×5%+170万円
    • 給与額 1,200万円を超える→ 230万円
給与所得控除の仕組みは実に奇妙だ。給与額が161.9万円以上660万円未満の場合は控除後の額が100円単位の不連続な値になる。それを求める巨大な表が用意されている。しかし、その表によらずとも計算する方法が所得税の確定申告書に記載されている。上記の控除額の情報はそれを踏まえて作った。
雑所得
  • 公的年金等控除額(65歳未満の場合)…但し、年金額を限度
    • 年金額 130万円以下→ 70万円
    • 年金額 410万円以下→ 年金額×25%+37.5万円
    • 年金額 770万円以下→ 年金額×15%+78.5万円
    • 年金額 770万円を超える→ 年金額×5%+155.5万円
  • 公的年金等控除額(65歳以上の場合)…但し、年金額を限度
    • 年金額 330万円以下→ 120万円
    • 年金額 410万円以下→ 年金額×25%+37.5万円
    • 年金額 770万円以下→ 年金額×15%+78.5万円
    • 年金額 770万円を超える→ 年金額×5%+155.5万円
事業所得 (青色申告承認を受けた場合)
  • 青色申告特別控除額 65万円…但し、事業所得額を限度

一時所得
  • 特別控除額 50万円…但し、一時所得額を限度…を控除
  • 控除後の金額の1/2を所得の合計に使う
譲渡所得 (譲渡する資産が土地、建物、株式…分離課税…以外の場合)
  • 短期譲渡所得 と 長期譲渡所得(譲渡する資産の所有期間5年以上)
  • 特別控除額 65万円…但し、譲渡所得額を限度…を短期譲渡所得から控除、控除し切れない場合は長期譲渡所得からも控除
  • 長期譲渡所得金額は、控除後の金額の1/2を所得の合計に使う

退職所得

退職所得は原則として分離課税になるが、源泉分離課税にも申告分離課税にも属さない。…(特別な場合には源泉徴収されない場合…住民税が分離課税にならない…がある為?)
源泉徴収される場合は、住民税も退職金の支払い時に徴収する。…現年分離課税…この場合だと退職金は所得額に影響しないので、実質は源泉分離課税と同じになる。
退職所得の税額 = f所得税額(退職所得額) + f住民税額(退職所得額)
退職所得額 = 退職金額 - 控除額
  • 控除額(役員の場合)…但し、退職金額を限度 
    • 勤続2年以下→ 80万円 
    • 勤続5年以下→ 勤続年数×40万円 
    • 勤続20年以下→ 退職金額×50%+勤続年数×20万円 
    • 勤続20年以上→ 退職金額×50%+勤続年数×35万円-300万円 

個人事業税

個人事業税は県民税である。所得税の確定申告のデータから県税事務所が税額を計算して納付書を送付してくる。(雑所得として申告しても賦課される場合がある。)

個人事業税額 = (事業所得額 - 225万円)×税率 税率:0%、3%、4%、5%
但し、65万円の青色申告特別控除を受けているものとする。

税率は営む事業により異なる。作家: 0% 大抵の事業: 5%

国民健康保険

市が運営する。保険料は世帯毎に計算され、賦課される。
保険料 = 医療給付分 + 後期高齢者支援金分 + 介護納付金分(注)
注: 介護保険第2号被保険者(40歳から64歳)のいる世帯のみ
  • 医療給付分 = (イ) + (ニ) + 21,120円 (限度額: 54万円)
  • 後期高齢者支援金分 = (ロ) + (ホ) + 6,240円 (限度額: 19万円)
  • 介護納付金分 = (ハ) + (へ) (限度額: 16万円)
  • 所得割 (イ)、(ロ)、(ハ)は、
    • (イ) 基準総所得金額×6.9%
    • (ロ) 基準総所得金額×2.2%
    • (ハ) 基準総所得金額(介護保険第2号被保険者の分のみ)×2.2%
  • 均等割 (ニ)、(ホ)、(ヘ)は、
    • (ニ) 被保険者数×27,720円
    • (ホ) 被保険者数×8,040円
    • (ヘ) 介護保険被保険者数×12,720円
  • 基準総所得額は、各被保険者の(総所得金額 - 33万円)…負の場合は0円…の合計
介護納付金を含む場合の所得割は、6.9% + 2.2% + 2.2% = 11.3% になるが、世帯の所得が合計されるので簡単に上限に達する。
上限額は、54万円 + 19万円 + 16万円 = 89万円 で、上限額に達した以降は実質的には保険料率は上記より低いと言える。

介護保険

市が運営する。第1号被保険者(65歳以上)の保険料は被保険者毎に計算され、(年金の年額18万円以上なら)年金から特別徴収される。

被保険者本人と世帯の所得により、第1段階から第14段階まで分類される。
  • 第1段階 は年額 28,100円 @住民税非課税世帯 & 本人収入80万円以下
  • 第2段階 は年額 39,000円 @住民税非課税世帯 & 本人収入120万円以下
  • 第3段階 は年額 46,800円 @住民税非課税世帯
  • 第14段階 は年額 143,500円 @本人所得1,500万円以上
第2号被保険者(40歳から64歳)の保険料は、健康保険や国民健康保険の保険料に含まれている。

後期高齢者医療制度

県が運営する。保険料は被保険者(75歳以上)毎に計算され、(年金の年額18万円以上なら)年金から特別徴収される。
  • 保険料 = 所得割 + 48,297円 (限度額: 57万円)
  • 所得割は、基準総所得金額×10.17%
  • 基準総所得額は、被保険者の(総所得金額 - 33万円)…負の場合は0円

法人税・地方法人税 (2019年4月1日以降開始事業年度に適用)

税務署に申告し、税務署に納税する。

法人税額=f法人税(所得金額) - Σ各種税額控除
  • 税率: 19% 控除税額 0円 @所得 800万円以下
  • 税率: 23.2% 控除税額 336,000円 @所得 800万円を超える

地方法人税額=法人税額×4.4%

法人県民税・法人事業税・地方法人特別税

県に申告し、納税する。(地方法人特別税は国税であり、その県が国に納税する。)

法人県民税額=法人県民税法人税割額 + 法人県民税均等割額
  • 法人県民税法人税割額=法人税額×3.2% (法人税額が2,000万円以下の法人)
  • 法人県民税均等割額=22,000円
法人事業税所得割額=f法人事業税(所得金額)
  • 税率: 3.4% 控除税額 0円 @所得 400万円以下
  • 税率: 5.1% 控除税額 68,000円 @所得 800万円以下
  • 税率: 6.7% 控除税額 128,000円 @所得 800万円を超える
法人事業税は法人の種類に応じて、所得割 + 付加価値割 + 資本割 (外形標準課税適用法人)…資本金額が1億円を超える法人、収入割 (収入標準課税適用法人)…電気・ガス供給業・保険業、所得割 (その他の法人)、で構成されるので、一般の中小企業は所得割のみ

地方法人特別税額=法人事業税所得割額×43.2%
法人事業税と地方法人特別税は、納税した事業年度の損金に出来る。 

法人市民税

市に申告し、市に納税する。

法人市民税額=法人市民税法人税割額 + 法人市民税均等割額
  • 法人市民税法人税割額=f法人市民税(法人税額) 
    • 税率: 9.7% 控除税額 0円 @法人税額 400万円以下 
    • 税率: 12.1% 控除税額 96,000円 @法人税額 400万円を超える 
  • 法人市民税均等割額=60,000円 @従業員数 50人以下

税金の不連続

免除されるか否か、その境目では所得が1円増えただけで税額が大きく増えて、所得が増えて手取りが減る、という状態が生じる。このような不連続となる場合を列挙する。
  • 住民税均等割の免除: 前年の合計所得金額が
    • 35万円×頭数 + 21万円×f境界(頭数 - 1) 以下
  • 住民税所得割の免除: 前年の合計所得金額が
    • 35万円×頭数 + 32万円×f境界(頭数 - 1) 以下
世帯全員の住民税が非課税の場合は住民税非課税世帯になる。高額医療費の自己負担限度額が低くなる、などの優遇措置が受けられる。
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  • 国民健康保険保険料の軽減措置 …軽減割合 7割、5割、2割
    • 国民健康保険の被保険者全員、世帯主、特定同一世帯所得者の前年度の総所得金額等の合計額(これを合計所得額とする)で判断する。
    • 特定同一世帯所得者とは、国民健康保険から後期高齢者医療制度へ移行した人のこと。
    • 軽減後保険料 = 保険料×(0.3 + 0.2×f境界(合計所得額 - a) + 0.3×f境界(合計所得額 - b) + 0.2×f境界(合計所得額 - c))
    • a: 33万円
    • b: 33万円 + 26万円×(被保険者数 + 特定同一世帯所得者)
    • c: 33万円 + 47万円×(被保険者数 + 特定同一世帯所得者)
  • 後期高齢者医療保険料の軽減措置 …軽減割合 8.5割、5割、2割
    • 後期高齢者医療の被保険者全員、世帯主の前年度の総所得金額等の合計額(これを合計所得額とする)で判断する。
    • 軽減後保険料 = 保険料×(0.15 + 0.35×f境界(合計所得額 - a) + 0.3×f境界(合計所得額 - b) + 0.2×f境界(合計所得額 - c))
    • a: 33万円
    • b: 33万円 + 27万円×被保険者数
    • c: 33万円 + 49万円×被保険者数
  • 厚生年金・健康保険の被扶養者認定基準
    • 被扶養者の年収が130万円未満 & 被保険者の年収の1/2未満
    • 年収は現在以降の見込額で非課税の収入等(継続性のある収入)も含む
    • と言う事は、被保険者の年収も被扶養者の年収と同じ基準で見積もる
  • 所得計算時の端数処理
    • 課税額は、1円未満の端数は切り捨て
    • 給与所得の660万円未満は特別な計算をする。
  • 税金計算時の端数処理
    • 税額は、100円未満の端数は切り捨て
  • 標準報酬月額の等級
    • 健康保険の等級は、第1等級から第50等級まで。
    • 厚生年金の等級は、第1等級から第31等級まで。
    • 最低・最高の等級を除き、各等級は、報酬が x円以上、y円未満のゾーンで区切られ、その等級の標準報酬額は (x + y)/2 になる。
    • 最低等級は報酬が1円以上、最高等級は報酬の上限無し
    • 健康保険の第1等級の標準報酬額 = (第2等級の標準報酬額)×2 - 第3等の標準報酬額
    • 健康保険の第50等級の標準報酬額 = (第49等級の標準報酬額)×2 - 第48等級の標準報酬額
    • 厚生年金の第1等級の標準報酬額 = 健康保険の第4等級の標準報酬額
    • 厚生年金の第31等級の標準報酬額 = 健康保険の第34等級の標準報酬額
  • 標準報酬月額の決め方
    • 資格取得時: 月額に換算した報酬額(取り決めた額)。その月からその等級。
    • 定時決定: 4月、5月、6月に受けた報酬額の平均値。9月から新等級。…(報酬額には残業代も含む。…残業代が翌月払いの給与に反映されるなら、3月、4月、5月はなるべく残業を控えた方が標準報酬月額を低く出来る。)
    • 随時改定: 固定的な報酬額の変動月以降の3ヶ月間の報酬額の平均値。それに対応する等級が、現在の等級と2等級以上の差が生じる場合は、4ヶ月目から新等級。…(残業代が増えても固定的な変更では無いため、これには該当しない…役員の場合には無関係だが。)