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自家用法人に関連する法律

そもそも法人とは何か

もともと、法的な権利と義務を持てるのは人間だけだった。しかし、「組織」で行うビジネスが大きくなれば、全ての契約を個人名義でするのも無理がある。そこで、「組織」が擬似的に「人」になれるようにしたのが法人だ。
民法 第34条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
そういう法律によって、法人は不動産を所有したり銀行口座を持てたり税金を払わねばならなかったりする。勿論、本当の人間では無いので、選挙権などは無いし、罪を犯せば罰金はあるが刑務所に入る事はない。

自家用法人に適した法人の種類

そして、法人には会社以外にも宗教法人、学校法人、NPO法人…など実に様々な種類のものがあるが、許認可が不要で誰でも自由に設立出来る法人が自家用法人に適した法人と言える。会社以外では一般社団法人がある。

一般社団法人には出資者は存在せず、従って利益の配当というものも無い。そこが会社との大きな違いで、ナントカ協会みたいな団体では会社でなく一般社団法人を名乗ることで、お金儲けが目的では無い事を名前で示せるのがメリットになる。

或いは、一般社団法人の内部留保資金(事業で稼いで、法人税を払って残したお金)は相続財産にはならない(個人から基金への拠出は相続財産)から、相続対策として活用できるかもしれない。
相続税法の改正により、2018年4月より一般社団法人の純資産額に応じた相続税が課せられるようになった。
自家用法人は事業を前提としていないが、事業をしても良い。それで利益が上がれば、それを還元する方法で役員報酬以外にも配当という道(個人所得にはなるが、社会保険料は取られない)があっても良い。

そうすると、やはり会社になるし、費用と手間を考えれば株式会社ではなくて持分会社になる。株式会社や持分会社は会社法で定義されている。

会社法とは

以前、会社に関しては商法の一部で定義されていた。しかし、商法から会社に関する部分が独立し、かつ有限会社法と商法特例法も融合させ、2006年5月1日より会社法として施行された。その日をもって、我が自家用法人も誕生した。

この会社法では有限会社は消滅し、既存の有限会社は株式会社の扱いを受ける事になったが、有限会社の名称は引き続き使える。そして、有限会社に代わるものとして合同会社という種類の持分会社が誕生した。

他には、合名会社という種類の持分会社は、以前は2名以上の無限責任社員が必要(商法では社員が1名になった場合は合名会社は解散する規定)だったのが1名以上に変わったのと、法人でも無限責任社員になれるように変わった。

そうすると、100%の子会社として合名会社が使えるようになった訳で、それなら無限責任だから会社の信用度は親会社と同等である事が保証される。…と私は思っているが、現実には子会社として有限責任である合同会社にする例が殆どらしい。

会社の信用度という意味では、無限責任である合名会社と合資会社の方が他の種類の会社よりも上のはずだが、会社設立のサービスをする者たちは口を揃えて信用度の面からという理由で株式会社を推す。しかし、簡単に設立出来る会社に信用などある訳が無い。株式会社を推すのは、その方が手数料を稼げるからに違いない。

しかし、会社は存続することで信用度が増していく。そういう意味ではもう設立出来なくなった有限会社が(会社の種別だけで判断するなら)一番信用度が高いだろう。

我が自家用法人も有限会社にしておいた方が良かったかも知れない、と思った事もある。しかし、後に続く同志の為に自家用法人についての情報を発信するという目的には、もう設立不可能な有限会社にしなくて良かったのだ。

合同会社が自家用法人に最適である

持分会社には合名会社・合資会社・合同会社の種類がある。この内、社員が有限責任のみなのは合同会社だ。(持分会社の社員とは、出資者かつ経営者の事を指す法律用語。)

有限責任とは、出資額を限度して会社債務を弁済する責任がある、ということ。
会社法 第580条 第2項 有限責任社員は、その出資の価額(既に持分会社に対し履行した出資の価額を除く。)を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負う。
この条文の意味は、例えば、100万円を出資した有限責任社員には、100万円を限度として弁済する責任がある…のだが、その出資した100万円が既に会社の資本金になっている(履行した出資)場合は、追加で弁済する責任は無いということ。

しかし、零細企業が融資を受ける場合には出資者でもある経営者が連帯保証人になるのが普通なので、無限責任との違いは少ないと言える。又、経営者が職務を遂行する時に怠慢、悪意、重大な過失があった場合にも会社や第三者に対して賠償責任が生じる。
会社法 第596条 業務を執行する社員は、その任務を怠ったときは、持分会社に対し、連帯して、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第597条 業務を執行する有限責任社員がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該有限責任社員は、連帯して、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
しかし、会社として事業を行えば、経営者として責任がなくても会社に莫大な賠償責任が生じる可能性も否定は出来ない。従って、万が一の事態に備えて有限責任である合同会社を選ぶのが理に叶う。

会社の定款と印紙税法

合同会社を設立するには、まず定款というものを作る必要がある。
会社法 第575条 合名会社、合資会社又は合同会社(以下「持分会社」と総称する。)を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
第2項 前項の定款は、電磁的記録をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
この定款は印紙税法に規定する課税文書に該当している。
印紙税法 第2条 別表第1の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。
別表第1 番号 6
課税物件:物件名 定款
課税物件:定義 定款は、会社(相互会社を含む。)の設立のときに作成される定款の原本に限るものとする。
課税標準及び税率 一通につき4万円
この規定により、書面で定款を作った場合は金4万円分の収入印紙を定款に貼り付け、割り印する必要があるが、電磁的記録による方法は文書では無いため印紙税を納める必要は無い。

この、会社法 第575条 第2項にいう「法務省令で定める…措置」とは、PDFファイルに電子署名する事だが、電子証明書にはマイナンバーカードに入っているものが使える。そして、電子署名に必要なソフトは無料のAcrobat Readerというものが使えるらしい。(私が会社を設立した時は、Acrobatの試用版(お試し期間は無料)で電子署名した。)

印紙税とのお付き合い

定款以外にも多種の契約書、証券、領収書等が印紙税法上の課税文書になっていて、多少でも事業を営むとすれば、これらの文書を扱う可能性は高い。

だが、高度情報化社会に於いて、印紙税を未だに課すよりも印紙税自体を廃止して経済活動を活発にした方が税収には好影響を与えると、個人的には思っている。

例えば、口座振り込みに限定して領収書は発行しないとか、契約もメールでのやり取りのみにすれば、印紙税を納める必要はない。

会社の登記

会社の成立、移転、解散、清算の結了、その全てに対して登記が必要である。
会社法 第579条 持分会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。
第914条 合同会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる事項を登記してしなければならない。
第1号 目的
第2号 商号
第3号 本店及び支店の所在場所
第4号 (略)
第5号 資本金の額
第6号 合同会社の業務を執行する社員の氏名又は名称
第7号 合同会社を代表する社員の氏名又は名称及び住所
第8号 (略)
第9号 第939条第1項の規定による公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め
第10号 (略)
第11号 (略)
第915条 会社において第911条第3項各号又は前3条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
第2項ー3項(略)
第916条 会社がその本店を他の登記所の管轄区域内に移転したときは、二週間以内に、旧所在地においては移転の登記をし、新所在地においては次の各号に掲げる会社の区分に応じ当該各号に定める事項を登記しなければならない。
第1号ー3号(略)
第4号  合同会社 第914条各号に掲げる事項
第926条 第471条第1号から第3号まで又は第641条第1号から第4号までの規定により会社が解散したときは、二週間以内に、その本店の所在地において、解散の登記をしなければならない。
第929条 清算が結了したときは、次の各号に掲げる会社の区分に応じ、当該各号に定める日から二週間以内に、その本店の所在地において、清算結了の登記をしなければならない。
第1号ー2号(略)
第3号 清算持分会社(合同会社に限る。) 第667条第1項の承認の日
これらの登記は商業登記法に従う。生身の人間に例えれば、出生届、転出・転入届、死亡届に当たるが、人間の場合とは異なり 法人登記には登録免許税という名の料金がかかる。(合併、分割、会社の種類変更 が出来る点でも人間とは異なる、が…人間には結婚・離婚・性転換 が出来るから似てるか。)

そして、代表社員の住所が移転した場合にも変更の登記が必要になる。

登記事項は公開される ので、会社の名前が分かれば代表社員の名前と住所も分かる事になる。会社が個人事業よりも信用度が高い理由の一つだが、自家用法人のように事業を目的にしない場合には信用度というメリットは無く、プライバシーが保護されないというデメリットだけが残る。

我が自家用法人も実在する以上、会社名も代表社員である私の名前や住所も登記されている。ただ、会社名が分からない限り、登記されている会社の数の多さに紛れるので、事実上、個人情報は守られる…と考えている。従って、このブログでは、我が自家用法人の名前は公表しない

法人の終え方

法人は適切に運営される限り、幾らでも長生き出来る。しかし、自然人には寿命がある。従って、後継者がいなければ自家用法人を終わらせることも考えねばならない。

合同会社(持分会社)には、破産か清算のどちらかの終え方しかない。総社員の同意により解散を決め、清算手続きを開始した場合でも、(債務が役員借入金のみの場合でも)債務超過が明らかになった場合は破産になる。
第656条 清算持分会社の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算人は、直ちに破産手続開始の申立てをしなければならない。
破産手続きには裁判所が関与し、手続き面でも費用面でも清算よりも面倒になるため、もし債務超過であれば、解散前に債務超過を解消しておくべきである。

事業で儲けがなければ、債務免除して所得の赤字を無くしても、法人住民税の均等割が掛かるので赤字となり、それが毎年累積して資本金額を上回れば債務超過になる。この場合、欠損金は無いので、債務免除で債務超過を解消すると債務免除益に税金が掛かる。

債務超過を解消するもう一つの方法は増資である。この場合は、登記に登録免許税3万円又は増資額の7/1,000のどちらか多い方(増資額が428万円以上の場合)の費用が掛かるが、債務免除で掛かる税金よりは安いはずである。

会社精算の手順は下記。
  1. (社員総会で会社解散の決議と清算人の選任をして、)次の書面を作成する。
    1. 総社員の同意により解散した場合…その同意を証する書面
    2. 業務執行社員の過半数の同意によって定める者が清算人となる場合…その同意があっ たことを証する書面及び清算人の就任承諾書
  2. 法務局で合同会社解散及び清算人選任登記をする。登録免許税 39,000円
  3. 官報に解散公告を載せる。料金目安 38,764円 (11行)
  4. 法務局で履歴事項全部証明書を請求する。
  5. 社会保険事務所で解散の手続きをする。
  6. 税務署、県税事務所、市役所市民税課で異動届と確定申告をし、納税する。(確定申告は、決算日を解散日とする以外は通常の確定申告と同じ)
  7. (清算事務を行い、終了時に社員総会で決算を承認して、)次の書面を作成する。
    1. 清算結了承認書
    2. 清算計算書
  8. 法務局で合同会社清算結了登記をする。登録免許税 2,000円 (解散公告が官報に載ってから2ヶ月以上経過後)
  9. 法務局で閉鎖事項証明書を請求する。
  10. 残余財産を出資者(=社員)に分配する。分配金が出資額を上回れば、その差額はみなし配当とされるので、所得税を源泉徴収し、税務署に納付、支払調書と支払調書合計表を作成して税務署に提出し、支払調書は出資者(=社員)にも送付する。
  11. 税務署、県税事務所、市役所市民税課で異動届と確定申告をし、納税する。
  12. 清算人が帳簿資料を10年間保管する。…これで本当に終わり。
第672条 清算人は、清算持分会社の本店の所在地における清算結了の登記の時から十年間、清算持分会社の帳簿並びにその事業及び清算に関する重要な資料(以下この条において「帳簿資料」という。)を保存しなければならない。
解散日までは事業を通常通り行っていて、利益と税金も通常と同じように考える。事業期間が1年に満たないので、法人住民税の均等割は月割りになる。

解散日から清算結了までは、清算事務(資産を売却し、債務を弁済する)のみが行われる。その過程で資産の売却額を収益、売却資産の帳簿価格と事務費用を費用として利益が計算される。赤字の場合も法人住民税の均等割は掛かる。