予告: 近日中に、ローマ字かな変換の新しいテーブルを公開する。発音記号の入力はその中に取り込まれる。入力出来る発音記号とそのコマンドは全面的に見直し、変更される。
Google日本語入力のローマ字変換テーブルを使って発音記号を簡単に入力する方法。
[IPA用のローマ字テーブル]を公開する。
IPA用のローマ字変換テーブルの使い方
Google日本語入力のプロパティでローマ字テーブル[編集]をクリックし、出てきたローマ字テーブル設定画面の編集リストからインポートを選択し、ダウンロードした IPA_table.txt を指定する。入力補助タブの シフトキーでの入力切替 は オフ を指定する発音記号は、その多くはアルファベットそのものなので、キーボードにある英小文字はそのまま入力出来る。IPA用の特殊な文字は、英大文字を使ったコマンドで入力する。
このテーブルの意味
入力は入力キーを示す。出力は、その入力キーの変換結果を示す。
その下の数字は出力文字のユニコードを16進数で示す。数字が2段になっている場合は、2つの文字コードを使った合成文字であることを示す。
最後の行はこのテーブルのバーションとヘルプ用にこのページのURLを出力する。この変換テーブルがGoogle日本語入力に入っている場合は、ブラウザのアドレスバーで \h とタイプすると、このページに来ることが出来る。
未確定状態
この色の文字は、変換が未確定である事を示す。続けて入力した文字で別の変換の定義に一致すれば、その出力に変化する為、それを意図しない場合には、そこで一旦確定させる必要がある。
入力文字と発音記号の対応の意味づけ
まず、英語で使っている発音記号の内、アルファベットそのものなのは以下の22文字である。a b d e f g h i j k l m n o p r s t u v w zそして、キーボードで直接入力出来ない文字には別のアルファベットを割り当てる。カッコ内の左側が割り当てるアルファベット、右側が発音記号である。
(逆に、発音記号に使ってない小文字は c q x y のみ)
全て大文字で始まる。小文字を割り当てると、(小文字だけの)英文との両立が出来なくなる。単語リストを作るような場合には必要な配慮だと思う。
- (O ɑ) o で表現するから。
- (Q æ) a の閉音節での発音。a も A も使われているので、その上にあるキーを使う。形も(小文字だったら) a に似てる。
- (C ɔ) 裏返した形が c に似てるから。
- (V ʌ) u の閉音節での発音。上下ひっくり返した形が v に似てるから。
- (I ɪ) 「エ」に近い「イ」の音。
- (U ʊ) 「ウ」に近い音。
- (M ɯ) 日本語の「う」の発音。上下ひっくり返した形が m に似てるから。
- (E ə) 曖昧母音。上下ひっくり返した形が e に似てるから。
- (A ɚ) 「ア」に近い音。
- (S ʃ) sh の音だから。
- (Z ʒ) sh の音の濁音だから。
- (T θ) th の音だから。
- (D ð) th の音の濁音だから。
- (Ch tʃ) ch で表現するから。(C を入力した時点では ɔ が表示されるが、構わず続けて h を入力すれば良い)
- (J dʒ) j で表現するから。
- (N ŋ) ng の音だから。
- (R ː) 長音記号。ローマ字入力では、"r" が「ー」に変換されるから。
- (' ˈ) 第一アクセント記号。
- (` ˌ) 第二アクセント記号。
アクセントの記号
IPAの規則ではアクセントの在る音節の前にアクセント記号を書くようである。Oxford現代英英辞典(OALD)の発音記号はこの形式だ。しかし、普通の英和辞典などで見かける発音記号では、アクセント記号はアクセントの在る母音の上に書かれる。これはIPAの規則とは異なるが、この方が音節の前に記号を書くよりも余程分かり易い。
一方、英単語のリストを作り、検索で発音記号の分析などをする事も考えればIPAの規則に従っている方が役に立つ場合もある。
従って、どちらの方法でも入力出来るようにした。IPAの方式でアクセント記号を入力する場合: アクセント記号の次の文字が母音字である時は一旦確定した上で次の文字を入力するようにしないと、母音の上にアクセント記号が付くことになる。
-- 以下、新しい入力方法について。説明書きを書くのは時間がかかるのであらかじめ書き溜めておく。
発音記号をコピペではなく、キーボードから入力出来る方法は既にあって、無料でダウンロード出来るようになっている。SIL という団体が出している IPA Unicode keyboads というものがそれで、IPA のほぼ全ての記号が入力出来る。
しかし、言語学者ではない一般の人にとっては語学学習に必要な範囲で発音記号が使えれば十分である。英大文字と数字を発音記号の入力に当てる方法は、入力できる発音記号が限られるけれども IPA Unicode keyboads の入力コマンドよりも遥かに使い易いと言える。
音声と音素
実は、発音記号の使い方として、音声を忠実に記録する目的と、音素を区別するために(英小文字だけでは足らないので)発音記号を利用する目的に分けられる。
音声の記録という意味では、発音記号はあらゆる言語で同じ使い方をするのに対して、音素の記録では言語毎に発音記号の使い方は異なる。そして、発音記号の必要性もまた言語によって異なる。発音と綴りがほぼ完全に一致するようなスペイン語(西語)やドイツ語(独語)などでは最初に発音と綴りの関係を学べば発音記号は不要と言える。
例えば、日本語の「ら」は、音素としては /ra/ と書かれるが、音声としての [ra] や [la] を含んでいる。
そして、中国語のピンインのように英文字(とü)だけで発音を表す記法があれば、やはり発音記号は不要である。
そういう観点から一般的な日本語話者にとっての必要な発音記号を選ぶとすれば、
- 英語に使われる発音記号
- 韓国語に使われる発音記号
- タイ語に使われる発音記号
- 仏語に使われる発音記号
と思う。韓国語もタイ語も表音文字なのだが、ラテンアルファベットではないので発音記号が特に初学者には有用だ。
そして、日本語の発音が他の言語の発音に利用できるかどうか考える為に、日本語の(音素だけではなく)音声が記述できる記号も欲しいと思う。
コマンドを SAMPA 準拠とする
発音記号の入力を考えた当初は英語の事しか考えていなかったが、もう少し汎用的に使えるように入力出来る発音記号を増やすとなると、コマンドが問題になる。
何か良い先例が無いものか調べていると、SAMPA というものを知った。それはまだUnicode が普及する以前に IPA の発音記号を ASCII の文字コードで置き換えて利用するという目的で考えられた仕組みで、発音記号では使われていない英大文字と数字と記号を 発音記号に割り当てている。それは偶然にも私の考えた方法と同じで、割り当ててある英大文字もほぼ同じだった。
Unicodeが普及した現代ではもはやSAMPAは使われないけれども、Unicodeの発音記号の入力コマンドとしての利用価値はまだあるだろう。
そこで、私が独自に決めたコマンドではなく、なるべく SAMPA に合わせる形でコマンドを決める事にした。そして、SAMPAでは使われなかった英大文字と数字と記号をSAMPAでは不足する発音記号に割り当てると共に、SAMPAで定義してある発音記号でも別の分かりやすいコマンドがあれば追加することにした。入力コマンドとしてなら、形や意味が似ているという以外に、キーボード上のキーの並びが隣とかShiftとか、そういう理屈も付けられる。
ところで、SAMPA を拡張してほぼ全ての IPA の記号を扱える X-SAMPA というものも作られている。これを使うことも考えたけど、言語学者でしか使いこなせないような珍しい発音記号が多数含まれると使い勝手が悪くなる。それに、X-SAMPAのコマンドは「言語キーボード」では使えないという欠点がある。
何か良い先例が無いものか調べていると、SAMPA というものを知った。それはまだUnicode が普及する以前に IPA の発音記号を ASCII の文字コードで置き換えて利用するという目的で考えられた仕組みで、発音記号では使われていない英大文字と数字と記号を 発音記号に割り当てている。それは偶然にも私の考えた方法と同じで、割り当ててある英大文字もほぼ同じだった。
Unicodeが普及した現代ではもはやSAMPAは使われないけれども、Unicodeの発音記号の入力コマンドとしての利用価値はまだあるだろう。
そこで、私が独自に決めたコマンドではなく、なるべく SAMPA に合わせる形でコマンドを決める事にした。そして、SAMPAでは使われなかった英大文字と数字と記号をSAMPAでは不足する発音記号に割り当てると共に、SAMPAで定義してある発音記号でも別の分かりやすいコマンドがあれば追加することにした。入力コマンドとしてなら、形や意味が似ているという以外に、キーボード上のキーの並びが隣とかShiftとか、そういう理屈も付けられる。
ところで、SAMPA を拡張してほぼ全ての IPA の記号を扱える X-SAMPA というものも作られている。これを使うことも考えたけど、言語学者でしか使いこなせないような珍しい発音記号が多数含まれると使い勝手が悪くなる。それに、X-SAMPAのコマンドは「言語キーボード」では使えないという欠点がある。
言語キーボードとは
Windows10は色々な言語に対応した言語キーボード(英語、仏語、独語、韓国語、タイ語、など)を提供している。それらの言語キーボードは事前に設定しておけば Winキー+Spaceを押すだけで一瞬で別の言語キーボードに切り替えることが出来る。
そして、マイクロソフト社が無償で提供している MSKLC (Microsoft Keyboard Layout Creator) というソフトでオリジナルの言語キーボード)も作る事が出来る。SIL という団体が出している IPA Unicode keyboads もこの MSKLC で作られた言語キーボードである。
言語キーボードは、1つのキーに対して、キー、Shift+キー、AltGr+キー、Shift+ AltGr+キーの4種類の定義が可能。その定義は、最大4つまでの文字コード、又はデッドキーが定義出来る。デッドキーは、次のキーとの組み合わせで文字コードを一つだけ定義出来る。3つ以上のキーの組み合わせは定義出来ない。
X-SAMPAでは、3つ以上のキーの組み合わせの定義が存在するし、2つのキーの組み合わせ(例: M\ → ɰ)でも、デッドキーとなる最初のキー単独でも文字コードが割り当てられている(例: M → ɯ)から、同じコマンドのままでは言語キーボードの利用は出来ない。(\ をデッドキーと定義して、\M をコマンドとするなら使えるのだが。)
X-SAMPAでは、3つ以上のキーの組み合わせの定義が存在するし、2つのキーの組み合わせ(例: M\ → ɰ)でも、デッドキーとなる最初のキー単独でも文字コードが割り当てられている(例: M → ɯ)から、同じコマンドのままでは言語キーボードの利用は出来ない。(\ をデッドキーと定義して、\M をコマンドとするなら使えるのだが。)
ローマ字変換で発音記号を入力するならば、コマンドに M\ と M があっても変換は可能なのだが、切り替えにはローマ字テーブルを入れ替える必要がある。しかし、言語キーボードでそれを実現するならばその手間は不要になって便利だ。よって、言語キーボードでも使えるようなコマンドにする。
発音記号キーボードの利用方法
まずはマイクロソフト社から MSKLC というソフトをダウンロードしてPCにインストールする。そして、[発音記号キーボード] のファイルをダウンロードする。これは MSKLC のソースファイルで拡張子が .klc になっていているが、内容はテキストファイルなのでセキュリティ上安心である(メモ帳などで確認出来る)。このファイルをダブルクリックすると MSKLC が立ち上がる。
内容を確認して貰い、OKならツールバーの Project → Build DLL and Setup Package を選ぶと発音記号キーボードの実行ファイルが作成される。作成されたフォルダの中の setup.exe をダブルクリックするとPCに「ハワイ語」の hatuon kigow キーボードが追加される。PCの再起動後に利用可能になる。
内容を確認して貰い、OKならツールバーの Project → Build DLL and Setup Package を選ぶと発音記号キーボードの実行ファイルが作成される。作成されたフォルダの中の setup.exe をダブルクリックするとPCに「ハワイ語」の hatuon kigow キーボードが追加される。PCの再起動後に利用可能になる。