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2017年9月29日金曜日

税務相談には税理士資格が必要

このところ、自家用法人をこの世に広めるべく色々考えている。

雇用される生き方で無ければ、自家用法人を持つと社会保険料と税金の合計で最も有利になるように自分で決める事が出来る。どう決めれば良いのかは、個々の条件によるのだが、私がそれを聞いて無償でお答えしても税理士法違反になる可能性が出て来る。
税理士法 第2条 税理士は、他人の求めに応じ、租税に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
 第1項 税務代理
 第2項 税務書類の作成
 第3項 税務相談
税理士法 第53条 税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。
そういう理由で、自家用法人について色々聞いて欲しいのだが、具体的にどうすれば節税になるのかは迂闊に答えられない。

事例を勝手に作れば問題なし

しかし、税理士法を良く読むと「他人の求めに応じ」無ければ全く問題ない事が分かる。こっちから一方的に事例を作り、社会保険料と税金の合計がどうなるかの計算結果を示しても良いのだ。

先日、行きつけの床屋さんで経営の話になって興味を覚えたので、
  • 個人事業のまま。
  • 法人を設立し、事業収入の全てを法人の収入とした上で法人所得がゼロになるように給与を支払う。
  • 個人事業に加えて自家用法人を設立し、最低限の給与を支払う。法人所得がゼロになるように個人事業の経費として自家用法人に業務委託費を支払う。
という場合を計算してみることにする。その他の具体的条件は私の主観による。
  • 家族は年間給与100万円のパートをしている配偶者と子供2人(16歳未満)。
  • 夫婦とも40歳から60歳迄。
  • 営業利益 (=事業所得+青色申告控除額+支払済個人事業税) が 200万円から700万円まで100万円刻み。
事業所得は、前年度事業所得に応じて課せられた支払済個人事業税を経費とする事が出来、更に青色申告の場合には65万円の控除を受ける事が出来る。これらの金額は法人の設立等で変化するため、純粋な収入と支出の差を営業利益とする。営業利益には、本人の人件費を含まない。

営業利益の範囲は、消費税が課税されない程度の売上げを上限とし、最低限の生活が営める額を下限とした。下限を下回るようならアルバイトの方が生活費を稼げる。

業務委託費について

自家用法人の経費は、給与と法定福利費と呼ばれる社会保険料の会社負担分だけである。年間の給与所得がゼロとなる設定だと、
  • 給与月額 54,200円 (年 650,400円)
  • 法定福利費月額 11,597円 (年 139,164円) … 2017年4月ー9月の場合
そうすると、その合計月額 65,797円 (若しくは、65,800円)を業務委託費とすれば良い。

通常は取引の実態がある限り、その金額が高額であっても問題が無いのだが、同族会社との取引だと税務署が否認する場合がある。(所得税法 第157条)

従って、この金額が世間相場から妥当だと主張する根拠が必要になる。まず、どのような業務を委託するのかについて考える。

どんな仕事にも必要であり、法人側にもコストが発生しない業務として、
  • 記帳業務代行
  • ネットによる宣伝業務代行
を考えて見た。記帳業務代行の相場は月1万円程度。これだけでは業務委託費が高額だと言われてしまうから、もう一つのネットによる宣伝業務代行が月5万円以上である正当な理由を考える。

ネットによる宣伝業務とは言っても、お店のブログを更新する程度の事しか考えてないが、これには相場がない。そうすると、この業務に月あたり何時間作業するかで金額を見積もるのが妥当と言える。そうすると、人件費の3倍とするのが妥当であり、人件費としてはブログを更新出来るスキルを持つ人材として最低賃金よりは当然に高い額(時給2,000円?)を請求出来る。

逆算すれば、ブログ更新作業として月10時間以上を約束すれば、月6万円の業務委託費が正当化出来る。一回の更新に3時間程度かかるとして、週に一度程度更新している実績を残せば問題ない…はずである。

社会保険料と税金の合計額を計算

計算には筆者が住んでいる市の国民健康保険の料率を使い、所得控除は基礎控除と配偶者控除のみとした。(他の扶養家族は所得控除対象の年齢外)そして、同じ営業利益がずっと続き、事業税(5%とする)が前年度の事業税と同じになるとして計算した。(社会保険料は2017年9月以降の値を使用)

まず、社会保険料と税金の負担率をグラフで示す。


個人事業と法人化した場合の差は思っていた程の違いは無かった。しかし、法人化すれば、税務は素人の手に負えなくて税理士費用に年間50万円程度は掛かるらしいから、費用に関しては個人事業のままの方が得だと言える。

一方、個人事業のままだが、素人でも運営可能な自家用法人に社会保険を託すようにすれば、費用面では明らかに有利である。

計算に利用したGoogleスプレッドシート…[社会保険料と税金]

個人事業
営業利益社会保険(法)法人住民税個人事業税社会保険(個)住民税所得・復興税社会保険+税率(%)
2,000,0000544,14002,300546,44027.3
3,000,0004,700813,28993,00039,400950,38931.6
4,000,00052,300920,910177,40082,5001,233,11030.8
5,000,000100,0001,028,520261,900151,7001,542,12030.8
6,000,000147,6001,136,141346,400238,6001,868,74131.1
7,000,000195,2001,243,762430,900411,1002,280,96232.5
法人
営業利益社会保険(法)法人住民税個人事業税社会保険(個)住民税所得・復興税社会保険+税率(%)
2,000,000259,60882,000255,68401,400598,69229.9
3,000,000402,20482,000396,1325,80024,500910,63630.3
4,000,000511,89682,000504,168114,70050,4001,263,16431.5
5,000,000658,15282,000648,216168,10077,7001,634,16832.6
6,000,000804,40882,000792,264222,200111,2002,012,07233.5
7,000,000914,10082,000900,300282,400172,7002,351,50033.5
個人+法人
営業利益社会保険(法)法人住民税個人事業税社会保険(個)住民税所得・復興税社会保険+税率(%)
2,000,000139,83682,0000137,34000359,17617.9
3,000,000139,83682,0000137,340033,800392,97613
4,000,000139,83682,00014,700137,340180,60084,100638,57615.9
5,000,000139,83682,00062,400137,340275,800165,900863,27617.2
6,000,000139,83682,000110,000137,340371,100289,0001,129,27618.8
7,000,000139,83682,000157,600137,340466,300483,5001,466,57620.9

法人の利益はギリギリ出ないように給与額を決める。具体的には、給与と社会保険料の会社負担分の合計が営業利益と等しくなる給与額を求め、100円未満の桁は切り上げる。

ただ、営業利益400万円の場合には黒字9,000円とした。それは、黒字が発生しないようにすると標準報酬月額が1等級上がり、それに基づき社会保険料を再計算して給与額を求めると標準報酬月額が元に戻ってしまうからである。標準報酬月額を上げるよりは僅かな税金を払う方が得であると判断した。(但し、その黒字分の税額は率の計算に含めず。)

個人事業
営業利益国民健康保険本人総所得金額住民税課税所得所得税課税所得
2,000,0005割軽減1,350,000145,86045,860
3,000,0002,345,300872,011772,011
4,000,0003,297,7001,716,7901,616,790
5,000,0004,250,0002,561,4802,461,480
6,000,0005,202,4003,406,2593,306,259
7,000,0006,154,8004,251,0384,151,038
法人
営業利益給与総額本人総所得金額住民税課税所得所得税課税所得
2,000,0001,741,2001,044,000128,31628,316
3,000,0002,598,0001,637,200581,068481,068
4,000,0003,478,8002,253,2001,089,032989,032
5,000,0004,342,8002,932,0001,623,7841,523,784
6,000,0005,196,0003,616,8002,164,5362,064,536
7,000,0006,086,4004,327,2002,766,9002,666,900
個人+法人
営業利益給与総額本人総所得金額住民税課税所得所得税課税所得
2,000,000650,400560,400-236,940-336,940
3,000,000650,4001,560,400763,060663,060
4,000,000650,4002,545,7001,748,3601,648,360
5,000,000650,4003,498,0002,700,6602,600,660
6,000,000650,4004,450,4003,653,0603,553,060
7,000,000650,4005,402,8004,605,4604,505,460

個人事業と自家用法人を併用する場合、営業利益が300万円の場合でも住民税非課税世帯になれる。これは、本人の総所得額が自家用法人への業務委託費の分だけ下がって約156万円になり、住民税非課税となる限度(被扶養者3人の場合は161万円)を下回った結果である。
コラム:住民税の控除額は所得税の控除額よりも低いので、所得税が課せられているのに住民税が非課税というのは奇妙に感じる。しかし、住民税を非課税にする判断基準は被扶養者数で決まる基準額であり、比較するのは課税額ではなく所得額なのだ。(子ども手当の制度が出来て、16歳未満の被扶養者の控除額はゼロにされた。しかし、被扶養者であることは変わりない。)
今回の試算では各種の節税策は施していない。個人事業では青色専従者として配偶者に働いて貰えば、社会保険料は1円も増えないのに大きく節税出来る。しかし、元々の営業利益が少ないのなら、それよりも外に働きに出てもらった方が世帯の可処分所得は増やせるはずだ。