中央新幹線の事

日経新聞の私の履歴書は、JR東海の名誉会長の話もいよいよ終盤である。今日の話は中央新幹線の事だ。

前回、まだ政府がJR東海の株式を持っていると勘違いしてブログを投稿したが、2006年4月に既に完全民営化していた。前のブログは修正しておいた。私は政府の圧力で作らされるのでは、と妄想していたけど、そうではないとすると、何か別の理由があるはずだ。

まず、この人は自分の積極的な経営がことごとく成功しているという体験を有している。国鉄の分割民営化への道筋を成功させた後、JR東海の職員になった後は新幹線への積極的な投資をして業績を向上させてきた。新型車両の導入による速度向上が需要を増やし、それを捌くために品川新駅を作り、名古屋駅を大規模開発する。

そうすると、中央新幹線で便利になれば、きっと需要も更に増えるだろうとの楽観がこの著者にはあるのだろう。しかし、それ以上にJR東海自ら建設するとの態度表明で中央新幹線の計画全体の主導権を握る事こそが著者にとって大事なのだと思う。

JR東海がやる気がなくても中央新幹線は建設されるとの読みがあるはずだ。JRとは別の団体、政府が仕切っている鉄道建設・運輸施設整備支援機構によって。もしそうなったら、中央新幹線の営業主体がJR東海になるとは限らない。名古屋まではJR東日本、名古屋から先はJR西日本、等と決まるかもしれない。そうなればドル箱路線の東海道新幹線の儲けが殆どだから、JR東海の経営は一気に苦しくなるに違いない。

しかし、もうJR東海が建設すると決まったので恐れた事態は生じない。後は経済状況その他を見ながら建設する事も、意図的に工事を遅らせる事もJR東海の判断で出来るのだ。今日の話の最後には、著者のその本音が現れている気がする。
国鉄改革で背負った過去債務は制御不能の経営リスクであり、その克服は「捨て身の積極的経営」と「デフレ・ゼロ金利の天佑」が織りなした奇跡だった。一方リニア中央新幹線建設のリスクは未然のものであり、回避可能である。経済状況の変化、工事の進捗などに柔軟に対応し、健全経営と安定配当を堅持しつつ建設を進める方針である。
しかし、リニア方式を強力に押し進めているのは何故なのかは分からない。現行方式の3倍もの消費電力を要し、新幹線網に接続することも出来ない、それに乗る人だってお弁当を広げる位の時間的余裕は欲しいと思うのだが。

ほぼ最短のコースを取る中央新幹線なら、距離は短くなるしカーブも殆ど無いだろうから現在の新幹線の技術でも時速300km以上で運転出来るなずで、そうすると東京ー名古屋の所要時間は1時間を切るだろう。リニア方式との差20分は駅までのアクセスや列車の待ち時間で逆転出来る程度の差でしか無いと思うのだが。沢山エネルギーを使って、ゆとりの時間も無くして、という社会の方向はいい加減に止めて欲しい。

まあ、リニア方式の開発を一度始めた以上実用化しなければ、という思いもあるようだが。そう言えば、北陸新幹線のルートもそうだ。はるか昔に長野を通って北アルプスをぶち抜いて北陸へ、という計画を作った。確かにそれが最短ルートである。それ以来、「長野を通って」と言うのがずっと生きていて、結局 北アルプスをぶち抜くことが出来なかったけど妙高を大回りして北陸まで繋がった。でも、そんな事なら長野を通らずに(ほくほく線と同じく)越後湯沢から分岐するルートにしておけば建設費も安くて所要時間も短く出来たはずなのに、と今でも思う。