その説明によると、2003年から2009年までは順調に回路の線幅が微細化されたのにその後は今迄のペースでは進まなくなっている、との事だった。
あれっ、そんなに変わってないんじゃないかな? 確かに通常のグラフでは減少の傾きが2009年から鈍っているけど、そんなの当たり前である。そのままの傾きで行けば今頃マイナスの線幅になってる。2年毎に 1/√2 の線幅 (面積では1/2に相当) になる傾向を見るなら片対数グラフを使うのは理系の常識である。片対数グラフなら一定の割合の変化は直線のグラフになるから。
それで、新聞記事のグラフに定規を当てて数値化してグラフにしてみた。量産開始時期は2003年、05年、07年、09年の先はグリッドに乗ってないので、10.8年、13.2年、15.8年とした。回路線幅はそれぞれ 90nm、65nm、45nm、31nm、22nm、13nm、10nmとした。
新聞記事のグラフの出典は日経エレクトロニクス2015年4月号となっている。ネットで検索して見ると、その記事にはご丁寧にも通常のグラフに傾きが変化した2つの点線が書き込まれていて如何にも2009年を境に減少率が鈍化したように描かれており、読者を誤解させると批判しているサイトが複数あった。
以前、「グラフの原点の価値が分からん日経新聞」というタイトルで投稿したことがあるけど、グラフは適切に使って欲しい。特に、対前年比の増減の割合が絶対数値よりも重要な数量は片対数グラフを使うべきである。百年前からの株価の変化のグラフとかが日経新聞にはしばしば載ってるけど、普通のグラフではずっと0付近にあってから近年になって急に上昇しているように見える。しかし、片対数グラフを使えば百年前から概ね一定の割合で上昇しているのが明らかである。
それから、両対数グラフというのもあって、例えば冷蔵庫の件で取り上げた表面積が長さの2乗に比例して容積が長さの3乗に比例する関係のような場合にもグラフ上で直線になるし、或いは極微小の領域から巨大な領域までの関係を見通せたりして便利だ。