スキップしてメイン コンテンツに移動

アルファベットについての雑学

英語を書くのに用いているのはアルファベット。ローマ字とも呼ばれるこの文字は、名前通り古代ローマの公用語であるラテン語を書くのに使われていたもの。

私は、ひょんな事からラテン語を勉強したので、英語を專門に勉強してきた先生方でも知らないような英語の勉強がちょっと楽しくなるアルファベットについての雑学が語れるかも知れない。

C から G を作る

アルファベットという名前が示しているのはアルファ( Α )、ベータ( Β )、…という文字のセット、つまりギリシア文字から来たもの。で、その3番目の文字はガンマ( Γ )。音価は g と一緒。しかし、アルファベットで3番目は c である。

ローマ帝国が西欧を制覇するよりもはるか昔、ローマ人の祖先がローマ近郊に定住した頃、そこにはエトルリア人と呼ばれる人々が住んでいた。文字を持たなかったローマ人の祖先達はエトルリア人から文字を教わり、これを自分たちの言語(ラテン語)を書き表すのに使うようになった。エトルリア人はギリシア文字から自分達の文字を作ったらしい。

しかし、このエトルリア語には語頭の有声閉鎖音( b、d、g 等)がなかった(韓国語と同じ!)ので、このガンマをエトルリア人たちは k の音価の文字として使っていた。ガンマは、もっと古くは「く」のような形で、それからエトルリアの方では c の形に変化したらしい。

ラテン語には g の音価があったので、ローマ人はこの c の文字を g と k の両方の音価の文字として使った。人名を略記する際、Gaius と Gnaeus はそれぞれ C. Cn. と書くのが習わしとなっているのがその名残である。

しかし、これでは不便だということで、"C" に横棒を加えて ”G” の文字を作り(まるでカナに濁点を加えるように)、両者を使い分けることにした、という事である。因みに、ローマ帝国全盛の頃は大文字しかなかった。小文字はずっと後の時代、修道院僧が写本する際に書きやすいように作り出されたそうである。

だけど、ローマ人達は、何故 k の文字を利用しようとしなかったのか。彼らはその文字も音価も知っていたというのに。僅かに、Kalendae (月初めの日)、Karthago (カルタゴ というローマにとって宿敵の都市)という言葉のみに使われた、と言うから、あるいは神聖な文字か不吉な文字と思っていたのかも。

この、k の文字は使わない、という伝統はそのままラテン語の末裔、フランス語、イタリア語、スペイン語などにも受け継がれ、そして、英語でも。

英語で k が綴りに入っていれば、ほぼ間違いなくその言葉はゲルマン系なのである。ノルマン仏語やラテン語から取り入れた言葉ではない。

それから時代が下って、c と g は後ろに i と e の母音が来ると音価がそれぞれ s と j に変わるように変化した(「カ、キ、ク、ケ、コ」が「カ、セィ、ク、セ、コ」に、「ガ、ギ、グ、ゲ、ゴ」が「ガ、ヂ、グ、ヂェ、ゴ」に)。

この伝統も英語は受け継いでいるから、get 「ゲット」や give 「ギブ」等は発音からラテン語系ではない、つまりゲルマン系の言葉だと分かる。じゃあ、ゲルマン系は ce や ci を「ケ」や「キ」って発音するかというと、そんな発音は英語にはないし。ラテン語学習者でしかそんな発音したことないはず。ゲルマン系の言葉なら(「ケ」や「キ」に限らず) k を使っている。

「ブルガリ」のロゴは BVLGARI

私は高級ブランドの「ブルガリ」の製品を持っている訳じゃないけど、新聞の広告を見てオッと思った。BULGARI の間違いでは? じゃなく、気取っているな、と。ラテン語を勉強していれば分かる。古くは U の文字はなく、V を使っていたと。(以下の話は小文字で)

日本語で「い」と「う」との後に母音が来た時には子音のように振る舞い、それぞれ「や」行と「わ」行の音になるように、ラテン語でも i と v は後ろに母音が来ると子音として振る舞うが文字に区别はなかった。しかし、これも時代が下り、i からは j が作られ、v からは u が作られ、母音と子音は別の文字を使って読み易くするようにした。

この時、v は現代の w の音価、j は現代の y の音価だったが、時代が下り発音が変化した。それどころか、「母音の前だけ」という原則を忘れて、すっかり子音になってしまい、vivre (生きる、仏語)とか reloj (時計、スペイン語)とかの綴りが出来たり(音価が変化したのだからそれでも良いんだけど)する。

しかし、英語だけは原則に忠実なのだ。英語で j と v の後に母音字の無い綴りは外来語を除けば私の知る限り、存在しない。尤も、その原則の為に不要な母音字が追加されて迷惑なこともある。例えば active は最後に読まない e があるから「エャクタイヴ」と思いきや「エャクティヴ」なのである。しかし、activ という綴りは英語では許されないのだ。

但し、j の方は語尾には使われることがなく、その音価は -dge の形で綴られる。だから、当然に j で終わる単語もないけど。蛇足ながら、j のラテン語時代の音価は発音記号に残っている。例えば、yes [jes]となっている。

そして、w の文字はラテン語では使わない。これは英語を書き表すのに新たに作られた文字なのである。しかし、v が二つくっついた形でも「ダブルヴィー」ではなく、「ダブルユー」と呼んでいるのは u と v が同じ文字だった名残だろう。「ワ」行の子音としてだけでなく、u の代わりの母音字としても使われている。

それから、ラテン語での y はギリシア語由来の語を書くために用いられた母音で、「イ」と「ウ」の間の音(「ユ」のように聞こえる)を表す。英語では、w と同様に「ヤ」行の子音としてだけでなく、i の代わりの母音字としても使われている。だから、この文字は母音の音価の方を採って「ワイ」と呼ぶのだろう。

H は何故「エイチ」と呼ぶ

アルファベットの各文字は大抵その文字の音価が含まれている。しかし、英語では、h に関してはその原則に当てはまらない。例えば、ドイツ語では h は「ハー」、k は「カー」である。そうであれば、 h を「ヘイ」と呼べば k が「ケイ」であるのと釣り合うのだが、実際は「エイチ」だ。

この理由を探るには、ラテン語の末裔たちを調べるに限る。何せ、仏語、スペイン語、イタリア語など、それらの言語では h は発音しないのだから。(英語でも、語頭の h 以外は発音しないけど。)

発音しないのに、何で綴りに使われているのかというと、かつては発音され綴りに含まれていた場合と子音と結合して別の音価を表す場合がある(それに、仏語の場合は h が在ることでリエゾンしない"場合が"あるけど)と分かる。そして、この文字の呼び方は c と結合した時の発音を表している、というのが私が作った説。
  • 「アッシュ」、仏語 ache
  • 「アチェ」、スペイン語 ache
  • 「アッカ」、イタリア語 acca
これらの最初の a は、いづれも前置詞の a だと勝手に解釈している。これは色んな意味を持つが、「~に」という意味ならピッタリだ。

しかし、イタリア語の場合、ch の組み合わせは chi 「キ」と che 「ケ」だけである。だから私の説なら h の呼び方は achi 「アキ」か ache 「アケ」でないと困るのだが。

とにかく、英語は仏語の影響が一番大きいと思われるので、仏語でうまく行っているから良しとする。前置詞も英語の to とか for とかに替えずに a のまま。それで、
  • 「エイチ」、英語 ache
なのである。語末に読まない e があるから、その前の a は開音節の「エイ」と呼び、ch の読みは英語では「チ」なのだから。