貞亨歴は,中国の{ア}の時代に,{イ}によって作られた授時暦を改訂して,日本の実情に合うようにしたものである。調べてみると、授時暦を作ったのは郭守敬、授時暦が作られたのは元の時代、貞亨歴が採用されたのは清の時代(の日本)である。
日本語の句読点に論理構造を制御する機能があると信じている私からみれば、正解はただ1つ、{ア}は清、{イ}は郭守敬しかありえない。
句読点は単に息継ぎの箇所を親切に指定してくれる記号に過ぎない説を教育してくれる国語の立場から言えば、{ア}は清と元と両方が考えられる。
問題文の「時代に」の後に打たれた「,」が仮になかったとすれば、{ア}は元しかありえない。
正解を{ア}は元、{イ}は郭守敬と考えていた世界史Bの出題チームはテンの重要性をテンで考えていない人達らしい。
因みに、私の手元にある「新しい国語表記ハンドブック 第5版」三省堂 によると、くぎり符号の使い方(文部省国語調査室で作成した「くぎり符号の使ひ方」案 昭和21年3月 を簡単に、分かりやすくまとめたものである、と脚注がある)の第2項に、
「、」は、文の中で、ことばの切れ続きを明らかにしないと、誤解される恐れのあるところに用いる。
とある。この文自体がハテナ?の文章だろう。「は」の後も「で」の後も「と」の後も「、」は不要なのだから。ついでに言っておくと、このハンドブックの公用文作成の要領(昭和27年4月4日内閣閣甲第16号依頼通知から抜粋、と脚注がある)の第3部 書き方について の注2によれば、
句読点は、横書きでは、「,」および「。」を用いる。
と書いてある。問題文はこれに沿っているけど、私は好きじゃない。句点にカンマを用いるのなら読点はピリオドにすべきだ、と思うから。それに、自治省は左横書き文書の作成要領という通達を出したことがあって、横書きの句点は「、」を用いると言っているし。タイトルが「カンマで駄目な話」じゃあ洒落にならないし。
それにしても、重箱の隅をつつくような問題じゃないか。こんなことは必要になった時に調べれば済むこと。世界史の壮大な流れの理解だけで満点が取れる問題を作って欲しいものだが。